魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】

「きょ、キョウ?」

突然の出来事に私は呆然とする。
とりあえず、鍵を開けてジャックとジュノを中に入れる。

「ん?」

相変わらず本に目を落としていたキョウが、顔をあげた。
艶やかな黒髪がさらりと揺れる。

何を思っているのかまるで分からない黒い瞳が、今は私を映していた。

「街中でそんなことしたら、皆が驚くよ?」

「じゃあ、その辺の人の記憶も消しておいてあげる」

なんてことない顔で、さらりと言う。

「いや、そういうことじゃなくって」

「ユリア」

一歩近づかれて、どきりとする。
が、下がってみてもすぐに玄関のドアに背中がぶつかる。

キョウは遠慮なく私の顔の横辺りに手をつき、そのまま顔を近づけてくる。

……この鼻梁の筋の通り方って反則って言うか、もはや芸術だよね。

なんて、場違いなことを考えていないと、ばくばくしている心臓が壊れちゃいそうな勢い。
綺麗な紅い唇が完璧な弧を描く。

「キスして」

……えーっと、ここって玄関先で。
下手したらご近所さんに見られてしまうんじゃないかって。

私は余計なことを考える。

「駄目?」

低い声が耳朶の傍で響く。

今駄目なんて言ったら、きっとまたキスさえしてくれなくなるんだ。
心臓の奥がどうしてこうもぎゅっと痛くなるのだろう。

私はキョウに振り回されっぱなしで、感情さえ自由にコントロールできない。