悔しいけど、彩芽は俺なんかに影響される奴じゃないんだよな。

 仕方ないことなんだよな。

 諦念の気持ちが見えかけて、俺は溜め息をついた。

 彩芽は自分の意思で死んだのだから、生き返りたくないのは当たり前。

 そうだよな。

 でも、そうやったところで心は割り切れない

 納得させようとしても、だからってどうしろとと、問い返してしまう。

 だけど、強い気持ちを持っている中、説得したところで彩芽は考えを変える訳がないことも分かっている。

「彩芽とはあと2か月で会えなくなるんだよな」

 虚空に向かって呟く。

 その言葉が呪いのように頭の中で木霊する。

 生きていても、彩芽はいない。

 未来を描こうとしたところで、彩芽のいない世界に生きていける活力が俺にはあるのだろうか。

 現段階ですら、未来が全く見えていないのに、希望がない中を歩いていく覚悟なんてできない。

 俺は、どうしたらいい。

 俺はどうせ、自分一人では何もできない。

 勉強も、仕事も、生きていくことすら。

 どうせ、価値なんかない。

 生きる意味もなくて、生きたいという気持ちがないのなら、死んだっていいんじゃないのか。

 死ぬべきなんじゃないのか。

 どうせ、生きたところで無機質にホームレスやらニートになって一生を終えるだけなら、いつ死んだっておんなじだろ。

 アスファルトの上を歩く靴音だけが耳の奥に響き、夕暮れの住宅街は誰も俺の痛みを知らぬまま、静かに流れていた。