自分の黒い影が茶色い地面に長くくっきりと伸びている。

 その上を舞う紅葉の葉も、静かに枯れて落ちていく。

 ついこの前まで、スマホのライトなんて必要なかったのに、今では辺りがすっかり暗くなってしまった。

 冬の気配が、肌にじわりと染み込んでくる。

 あれから何度か彩芽と会って、一緒に遊んだ。でも、「生きたい」という言葉は、まだ彼女の口から聞けていない。

 あと、7ヶ月。

 雨粒キャッチ、水たまりしりとり。

 まだいくつかアイデアはあるけれど、それもいつか尽きてしまうかもしれないという不安がつきまとう。

 昨日は落ち葉を拾って、お互いの名前を地面に書いた。

 彩芽は少し笑ってくれた。でも、それはどこか作り笑いのようで、それ以上の反応はなかった。

 焦りが胸を締めつける。

 ふと、昔彩芽が教えてくれた言葉が頭をよぎる。

 風が吹くたびに、時間が過ぎていく音が聞こえるような気がする。

 スマホの画面で時間が進んでいくのを見ていると、逆に自分が追い詰められていくような気がして、それでも目を離せない。

 風が冷たくなってきた。

 彩芽の髪が揺れるたびに、夏の残り香が遠ざかっていくようだ。

 公園のベンチに並んで座っても、ほとんど言葉を交わさなかった。

 どうすればいいのか。どんな言葉を選べば、彩芽の心に届くのか。

 俺の小さな頭ではその答えにたどり着けなかった。

 思考が絡まり、混乱していたそのとき、沈黙の中で一枚の落ち葉がふたりの間に舞い降りた。

 それを拾って、そっと彩芽の掌に乗せた。

 でも、彩芽は何も言わず、ただじっとその葉を見つめた。

 あと、6ヶ月。

 言葉にできない想いが、胸の奥で絡まりながら渦を巻いている。