「水たまりをジャンプして、派手さを勝負するのとかどう。あと、雨の映え写真を撮るのとか」
彩芽の綺麗な横顔を見つめていた。
鼻筋はすっと通り、唇は小さくほんのり色付いている。
「いいじゃん」
その瞬間、彩芽の眉がほんの少しだけ動いて、目元が柔らかくほどけた。
口元には気づかれないくらいの小さな笑み。
楽しそうな表情だった。
「水たまりに思いっきり飛び込むの?」
目を輝かせて、俺の顔を覗き見る。
「うん。まあ、服は少し汚れちゃうかもしれないけど、それでもよかったら」
「前に汚しちゃったときに、いつの間にか消えてたから大丈夫」
得意げな顔で、鼻を膨らませて笑う姿はまるで子供のようだ。
「俺から行っていい?」
そう言って小さめに手を挙げると、「私の後は、さすがに出づらいもんね」と笑う。
「そんなことないよ」
そう言って一歩踏み出す。
服が汚れることは気にしていないはずなのに、なぜか少しだけ抵抗を感じる。
目の前の水たまりに思いっきりジャンプをすると、水が顔にはねた。
冷たく、少し茶色がかった水だった。
「じゃあ、次私だね」
雨を気にせずに、東屋から出て、小さな水たまりに近づく。
数歩後ずさりして、ふーと緊張した面持ちで息を吐く。
緊迫した空気の中、彩芽が水たまりに向かって走り出した。
タタタタタッ。
大きく足を踏み出して、駆けていく。
パシャン。
水たまりから大きく水が跳ねて、上空へ飛び散った。
そうだ、彩芽は陸上部だった。
小さい頃から新体操をやっていて、体をしなやかに動かす彩芽の姿に、俺はいつも見惚れていた。
跳ね上がる滴が光をまとって、星が降ってきたかのように眩しく輝いている。
綺麗だ。
飛び跳ねる彩芽の姿も、滴も、楽しそうな彩芽の表情も。
「どっちの勝ちかな」
自信満々な顔で俺に歩み寄る。
「彩芽の勝ち。彩芽の勝ち」
捲し立てるように不服顔で言いながらも、嬉しさに包まれていた。
俺は自分で誘った割りに惨敗して悔しい反面、胸の奥で綺麗だったなとさっきの様子を思い浮かべていた。
「やった」
無邪気に手を上げて喜ぶ姿に、可愛くて嬉しくなる。
気がつくと、彩芽は水たまりの上で大々的に飛び跳ねて、紙にも頬にも滴が飛び散っていた。
「うわっ、冷た」
そう言って笑う声は雨音に負けないくらいに強く、胸にじんわりと沁み込んでいった。
ビシャビシャの制服で家に上がって、靴下を脱ぐ。
床に白く自分の足跡がぺったりと付く。
棚にあるタオルを取って、制服をざっと拭いた。
自分の部屋に入って、「きっと大丈夫」と呟いた。
この調子なら、彩芽はきっと生き返れる。
波打ち際のような浮き沈みの激しい心が声に出すと、少し和らいだような気がした。と、少し和らいだような気がした。
彩芽の綺麗な横顔を見つめていた。
鼻筋はすっと通り、唇は小さくほんのり色付いている。
「いいじゃん」
その瞬間、彩芽の眉がほんの少しだけ動いて、目元が柔らかくほどけた。
口元には気づかれないくらいの小さな笑み。
楽しそうな表情だった。
「水たまりに思いっきり飛び込むの?」
目を輝かせて、俺の顔を覗き見る。
「うん。まあ、服は少し汚れちゃうかもしれないけど、それでもよかったら」
「前に汚しちゃったときに、いつの間にか消えてたから大丈夫」
得意げな顔で、鼻を膨らませて笑う姿はまるで子供のようだ。
「俺から行っていい?」
そう言って小さめに手を挙げると、「私の後は、さすがに出づらいもんね」と笑う。
「そんなことないよ」
そう言って一歩踏み出す。
服が汚れることは気にしていないはずなのに、なぜか少しだけ抵抗を感じる。
目の前の水たまりに思いっきりジャンプをすると、水が顔にはねた。
冷たく、少し茶色がかった水だった。
「じゃあ、次私だね」
雨を気にせずに、東屋から出て、小さな水たまりに近づく。
数歩後ずさりして、ふーと緊張した面持ちで息を吐く。
緊迫した空気の中、彩芽が水たまりに向かって走り出した。
タタタタタッ。
大きく足を踏み出して、駆けていく。
パシャン。
水たまりから大きく水が跳ねて、上空へ飛び散った。
そうだ、彩芽は陸上部だった。
小さい頃から新体操をやっていて、体をしなやかに動かす彩芽の姿に、俺はいつも見惚れていた。
跳ね上がる滴が光をまとって、星が降ってきたかのように眩しく輝いている。
綺麗だ。
飛び跳ねる彩芽の姿も、滴も、楽しそうな彩芽の表情も。
「どっちの勝ちかな」
自信満々な顔で俺に歩み寄る。
「彩芽の勝ち。彩芽の勝ち」
捲し立てるように不服顔で言いながらも、嬉しさに包まれていた。
俺は自分で誘った割りに惨敗して悔しい反面、胸の奥で綺麗だったなとさっきの様子を思い浮かべていた。
「やった」
無邪気に手を上げて喜ぶ姿に、可愛くて嬉しくなる。
気がつくと、彩芽は水たまりの上で大々的に飛び跳ねて、紙にも頬にも滴が飛び散っていた。
「うわっ、冷た」
そう言って笑う声は雨音に負けないくらいに強く、胸にじんわりと沁み込んでいった。
ビシャビシャの制服で家に上がって、靴下を脱ぐ。
床に白く自分の足跡がぺったりと付く。
棚にあるタオルを取って、制服をざっと拭いた。
自分の部屋に入って、「きっと大丈夫」と呟いた。
この調子なら、彩芽はきっと生き返れる。
波打ち際のような浮き沈みの激しい心が声に出すと、少し和らいだような気がした。と、少し和らいだような気がした。



