蓮の手は大きかった。

　幼稚園の頃に握った手よりもずっとしっかりしていて、大きかった。

　自分で言うのも変だけど、幼稚園までの私はスターだった。

　そして、スターである自分に酔っていた。

　周囲の視線が心地よく期待に応えようと頑張っていた。

　今ではその頃の記憶はアルバムのように断片的にしか思い出せないけれど。

　再会した時、蓮は過去のスターだった私を追いかけているのだと思った。

　でも、違った。

　いや、あの頃の私として見ていた部分もあったかもしれない。

　それでも、蓮は変わった私を受け入れてくれた。

　自分の気持ちを押し殺すようになってしまった私を突き放さずに、抱きしめてくれた。

　蔑むことなく、暖かい笑顔でいてくれた。

「前の自分に戻れたら」と思っても、どうしたら戻れるのかわからない苦しさに寄り添ってくれた。

「ちっぽけなんかじゃないよ」

　良心の期待に応えられなかったとしても、蓮は私を救ってくれた。

　だから連は私のことは気に病まなくていい。

　私が自殺したのは弱かっただけで、蓮には何の罪もない。

　夜の静けさの中、私は過ぎ去っていく背中に祈りをこめながら、ただただ見つめていた。