そこだけ、時がゆっくり進んでいるみたい。


「キレー……。」


「……んね、」


山の頂上にあるシルエットは2つだけ。


それがむず痒く感じた。

ちょっぴり恥ずかしくて、ちょっぴり嬉しくて。


「神様ー!今年もよろしくー!」


隣で海に向かって叫んだ海斗の横顔が綺麗でボーっと見つめた。


満面の笑みで、目がキラキラしている。

その瞬間、好きだ、と思った。


スマホをアウターのポケットから取り出し、カメラを起動する。


カシャ


海斗はそれに気がつくこともなく、朝日を淡々と見続けている。


ずっとこの時間が続けばいいのに。


そんなベタなことを考えていたら、あたりはもう暗さは減って、俺の時間だとも言わんばかりに太陽が顔を出していた。

西側のまたたく星に魅了されながらも海斗に視線を移した。


「ん?」


私の視線に気づいた海斗がこちらに顔を向けた。

まだ、目がキラキラしている。


「ね?朝日。」


朝日とは、私の名前だ。

海斗に呼ばれる朝日が一番優しくて大好き。


「はーい?」


「今年は神様にどんなお願い事する?」


………ちょっと考えた。


言っていいのか、それ。


「………言わない。」