いつか、君は私の生きる意味になる。

「いいじゃん」

「理由になってない」

強い口調で返す。こんな時まで適当なことを言う江崎が、無償に苛立たしかった。

「とにかく居よう。ね?」

江崎の声はなおも穏やかだった。その優しさが、美雨の心を締めつける。

「…」

美雨は沈黙する。

このまま江崎の言葉を受け入れてしまえば、学校に行かなくてもいい理由ができてしまう。

それは、美雨にとっても敗北だった。

「じゃあ決まりね」

江崎は美雨の沈黙を肯定と受け取ったらしい。

嬉しそうに、美雨の顔を覗き込む。

「なにも言ってない」

江崎の視線から逃れるように顔を背ける。

「じゃあ学校行くの?」
江崎の問いに、私は黙り込んだ。行きたくない。

その一言が喉の奥に引っかかって、どうしても出てこない。

「行かないけど…さ」

美雨はようやくそれだけを絞り出した。