でもそれらを言うことはない。

母が悲しむから。
キャピキャピな母がメソメソと泣くから。

多分父は気付いてる。

でも何も言わない。

妻が悲しむから。
キャピキャピな妻がメソメソと泣くから。

だからその代りに、父は私に時間を与えてくれるようになった。

私の胸の鬱憤を晴らす時間を与えてくれる。

父と私の2人だけの秘密。
父と私の2人だけの時間。
父と私の2人だけの空間。

それは母が外出した時にだけこっそり訪れる。
こっそりそのドアを開け、こっそり足を踏み入れる。


ガレージに続くドア。
その奥に広がる夢の世界。
父によって改造された、母のそれとは違う異空間。