もともと無口なのもあるけど、女が何も言わねぇから、俺もそのまま黙って女を見ていた。

沈黙を破ったのは俺でも女でもなく、横にいた幼馴染の清。

『前向いてないと危ないよ?』

その声に女の顔がキョトンとする。
キョトンとしたまま、清に顔を向けることなく俺を見続ける。


なんだ、こいつ?


返事を待つ清も首を傾げる。
首を傾げながら、女の顔の前で手を上下させてみる。

『おーい?大丈夫ー?』

その手がスイッチをオンに切り替えたように、女がハッと顔を上げた。
そして、その目がゆっくり左右に動く。
その目に映る人数が増えるに比例して、女の顔から血の気が引いていく。
最後にまた俺に視線を戻すと、その驚愕ぶりは頂点に達したようだった。

まぁそりゃそうだろう。
この辺じゃ一番評判の悪りぃ学校だ。
こんな裏道で屯ってる俺らが、ロクなもんじゃねーコトぐらい、簡単にわかるはずだ。

女が体を引く。
俺の腕がそれを阻む。

仲間たちの野次が飛ぶと、腕の中の体がさらに強張る。

でも……

女の顔に本当に恐怖の色が浮かんだのは、この直後のコトだった。