女の子はみんな、白馬の王子を待っている。

颯爽と自分を迎えに来てくれる、王子様を待っている。


でも……


私を助けてくれたこの王子様は……

白馬の王子というよりも。


長めの黒髪をなびかせて回し蹴りを決めるこの王子様は……

白馬の王子というよりも。


静かな口調なのにチビるほどの迫力を持つこの王子様は……

白馬の王子というよりも。


白学らんを身にまとった、野武士……。


再び私に向き直って、鋭い視線を向けるこの人に。
お礼を言わなきゃいけないのに。
それなのに。

そんなことを考えてしまったもんだから。


言ってしまった。

思わず出てしまった。

小さい声だったけれども。

聞こえてないかと思ったけれども。

男の鋭い視線が、一瞬大きく開かれた。



「か……



かたじけない………。」