君がいない夏を、もう一度壊す。



最初は、柚希が目の前にいることが夢なのではないかと、未だ信じられなかった。

大学の講義内容だとか、デートに行った日付も、そして柚希の発言までもが覚えている範囲の夢の中と全く一緒で、もしかしたら予知夢なんじゃないかと思う時もあった。


もし、これが予知夢ならば。


僕は絶対に彼女を死なせてはならない。


絶対に、絶対にだ。


「柚希、今日泊まってかない?」
「なに、最近凌なんか変じゃない?そんな私のこと好きなの〜?」

茶化されつつも怪訝そうにする柚希に冷や冷やしながら、今日も特に何も変わっていない柚希のことを不思議に思う。


もし、8月の下旬に死のうと決意するならば。
「揺るがないほどの決意」であるならば、もうこの時から既に何かトリガーがあるはずだ。

わからない。

柚希だけを見ていたら、わからない。



「柚希、なんか悩みある?」


布団に潜りながら、僕が尋ねても。

「悩み〜?うーん、最近ほのかが遊んでくれないこととかかな、?」
と絞り出している。


別れ話は、出てこなかった。

僕はいつもの柚希を見て安心していた。


きっともう、柚希は死なないはずだ。