スマホの写真アプリを開く。

「柚希」のフォルダをタップし、満面の笑みで笑う柚希の写真を見つける。


…海に行ったんだよな。

別れを切り出される前の、最後のデート。

当然最後だと思っていない過去の僕は、柄にもなく砂浜で「ゆずき」と「りょう」を相合傘で角ばった字で結んだ。


「っ…ゆず、き…」


あの時、別れるのを認めなければよかった?

荷物を持って僕の部屋を出る時、無理矢理にでも止めとけばよかった?

それとも、誕生日前日に会いに行けばよかった?


…どうすれば、柚希は死を免れることができたんだろう。


柚希がいないまま夏が終わるなんて、信じられない。


柚希と一緒に、夏を終わらせたい。


柚希がこの世にいるうちに、今夏を終わらせたい。