後から分かったことだが、不良は同じ部活の1年生に物の押し売りをしていたらしい。
売っていたのは部活の備品だった。

「命、大丈夫!?」

現場が落ち着くと、友達が一目散に駆け寄って来た。

私は適当に返事をしながら、凪を探した。
凪はたくさんの人達に囲まれていて、さっきの出来事なんてなかったかのようにしていた。

「あ、あの、凪さん。さっきはありがとうございました」

遠くからそれだけ言うと、凪は目線だけこちらに合わせて、微笑みながらヒラヒラと手を振った。

その姿はまるで異国の王子様だ。
私はただそれに、見惚れていた。