ちなみに、あの不良は廊下のど真ん中をズカズカと歩いていたらしい。

対して凪はちゃんと右側通行で歩いていたし、不良が通れるようにわざわざ端の方を歩いていた。

その場に居た全員が、不良が悪いと思っていたはずだ。

でも、誰も何も言わなかった。不良の怒りの矛先が自分に向くのが怖かったからだ。
人間は『傍観』という名の自己防衛が得意なのだ。

とうとう不良は凪の胸ぐらを掴もうと手を上げた。

私は居ても立っても居られなくなって、サッと窓枠を乗り越えた。
真っ直ぐに不良の方へと向かい、ゴツい不良の腕を掴む。

「あ?誰だてめぇ?!」

「そこの人のクラスメイト。お兄さんの3年生だよね?なんで1年生の校舎を歩いているんですか?」

「あ?んなのどーでも良いだろ!」