気まずそうにしながらも、部長は強引に結衣が作成したA社の資料の話に持っていくと、何事もなかったかのように表情を切り替えた。
しばらく話込んだが、社長からのコールは入らない。痺れを切らした平川さんがそろそろ次の予定に差し支えるから、と時間をみて立ち上がった。
「田宮さん、今日の私の態度はあなたに対して失礼だったと思います。本当に申し訳ない」
店を出る時、平川さんに呼び止められると、平川さんは綺麗な姿勢でまっすぐに結衣に向けて頭を下げた。
「平川さん!頭を上げてください!
そんなお詫びを受けるようなことは何も」
「どうしたんだ?」
先に店を出ていた部長が二人に声をかける。
「いえ、特には。私は上に向かいますのでここで。湊部長、社長との会食の内容は後ほど。
田宮さん、今度はきちんと食事の機会を設けましょう。加山さんの依頼も果たせていませんから。
オアシスの話もぜひ伺いたいですね」
平川さんは部長へ向けて声を返し、結衣にだけ聞こえるように、「約束ですよ」とささやいた。
結衣は腰を折るように頭を下げ、部長と共に店を後にした。
オフィスに戻るとすぐに部長からの新たな指示が出た。
弥生さんが心配していたほどの大きな予定の変更はなく、弥生さんと二人で顔を見合わせホッとする。
部長は指示を伝えると、すぐにまた別の社員を伴って外出した。
予定を緩くしていたところも、部下の予定を確認してすぐにフォローの時間に充てる。
部長の忙しさは本当に目まぐるしい。
実際に部長のアシスタントに就いてから、それをより強く実感していた。
「それから田宮さん、今日の昼食の感想をあとで聞かせてくれ。
書面はいらないから、夕方時間を空けておいてくれ」
出際に部長から声をかけられ、結衣は思考が固まった。
レストランでのことを思い出そうとするが、平川さんとの会話という会話、緊張でほとんど覚えていない。
「弥生さん、どうしよう」
思わず弥生さんに愚痴をこぼすと、「あら、珍しい」とうれしそうに弥生さんが向き直った。
「顔に出るからすぐわかるけど、いつも自分の中に溜め込んでるから。結衣ちゃんの方から口に出して頼ってくれるなんて、嬉しいわ。
それで、どうしたの?」
「ーーーーそれで、平川さんを怒らせてしまって」
土曜日の件から順を追って弥生さんへ説明した。
「難しく考えなくても、そのまま、話した内容は覚えてませんって言えば大丈夫よ」
弥生さんは結衣の話を一通り聞くと、笑顔でポンと結衣の背中を叩いた。
「湊部長にも、弥生さんにもご迷惑をかけてるじゃないかと思って申し訳なくて」
「平川くんのことも心配いらないわ。
湊部長に近づきたい社員は多いのよ。それで結果的に足を引っ張ってしまう人も少なからずいるのよね。
社長秘書として、社長の息子の周囲を気にしてるだけだから。
私たちが入社した頃から色々あったのよ。
今度教えてあげるわね」
弥生さんはそう言ってくれたものの、部長にどう報告するか、悩んでいるうちに夕方を迎えた。
間も無く退勤時刻だが、部長はまだ戻らない。時短の弥生さんはとうに退勤した後で、一人だと言うのに息が詰まる。
どうしよう。
このまま部長が戻らないなら待機、いや無駄に残るのも申し訳ないし。
このまま帰るのも落ち着かないが、部長にメールを送り、退勤することにした。
しばらく話込んだが、社長からのコールは入らない。痺れを切らした平川さんがそろそろ次の予定に差し支えるから、と時間をみて立ち上がった。
「田宮さん、今日の私の態度はあなたに対して失礼だったと思います。本当に申し訳ない」
店を出る時、平川さんに呼び止められると、平川さんは綺麗な姿勢でまっすぐに結衣に向けて頭を下げた。
「平川さん!頭を上げてください!
そんなお詫びを受けるようなことは何も」
「どうしたんだ?」
先に店を出ていた部長が二人に声をかける。
「いえ、特には。私は上に向かいますのでここで。湊部長、社長との会食の内容は後ほど。
田宮さん、今度はきちんと食事の機会を設けましょう。加山さんの依頼も果たせていませんから。
オアシスの話もぜひ伺いたいですね」
平川さんは部長へ向けて声を返し、結衣にだけ聞こえるように、「約束ですよ」とささやいた。
結衣は腰を折るように頭を下げ、部長と共に店を後にした。
オフィスに戻るとすぐに部長からの新たな指示が出た。
弥生さんが心配していたほどの大きな予定の変更はなく、弥生さんと二人で顔を見合わせホッとする。
部長は指示を伝えると、すぐにまた別の社員を伴って外出した。
予定を緩くしていたところも、部下の予定を確認してすぐにフォローの時間に充てる。
部長の忙しさは本当に目まぐるしい。
実際に部長のアシスタントに就いてから、それをより強く実感していた。
「それから田宮さん、今日の昼食の感想をあとで聞かせてくれ。
書面はいらないから、夕方時間を空けておいてくれ」
出際に部長から声をかけられ、結衣は思考が固まった。
レストランでのことを思い出そうとするが、平川さんとの会話という会話、緊張でほとんど覚えていない。
「弥生さん、どうしよう」
思わず弥生さんに愚痴をこぼすと、「あら、珍しい」とうれしそうに弥生さんが向き直った。
「顔に出るからすぐわかるけど、いつも自分の中に溜め込んでるから。結衣ちゃんの方から口に出して頼ってくれるなんて、嬉しいわ。
それで、どうしたの?」
「ーーーーそれで、平川さんを怒らせてしまって」
土曜日の件から順を追って弥生さんへ説明した。
「難しく考えなくても、そのまま、話した内容は覚えてませんって言えば大丈夫よ」
弥生さんは結衣の話を一通り聞くと、笑顔でポンと結衣の背中を叩いた。
「湊部長にも、弥生さんにもご迷惑をかけてるじゃないかと思って申し訳なくて」
「平川くんのことも心配いらないわ。
湊部長に近づきたい社員は多いのよ。それで結果的に足を引っ張ってしまう人も少なからずいるのよね。
社長秘書として、社長の息子の周囲を気にしてるだけだから。
私たちが入社した頃から色々あったのよ。
今度教えてあげるわね」
弥生さんはそう言ってくれたものの、部長にどう報告するか、悩んでいるうちに夕方を迎えた。
間も無く退勤時刻だが、部長はまだ戻らない。時短の弥生さんはとうに退勤した後で、一人だと言うのに息が詰まる。
どうしよう。
このまま部長が戻らないなら待機、いや無駄に残るのも申し訳ないし。
このまま帰るのも落ち着かないが、部長にメールを送り、退勤することにした。

