休息はオアシスで

電話を終え、暗くなった画面をしばらく見つめる。気にしなくていいと言われても、電話口の向こうに資料を見つめる部長の険しい顔が思い浮かぶ。
そのほかの部分にも不備があるのでは、と不安になる。

「結衣ちゃん、お仕事?」

美子さんが心配そうにこちらを見ている。

「あ、はい。部長が出勤されてるみたいで…」

オフィスで顔を顰める湊部長が脳裏に浮かぶ。
部長は普段社外に出ていることが多いからこそ、アシスタントの仕事次第で、負荷が大きく変わる。

私がきちんと提案書を仕上げて、あと1日でも早く提出していたら、部長は今日仕事しなくてよかったのかも。
湊部長、ちゃんと休まれてるのかな…。

申し訳なさと落ち着かなさが結衣の気持ちを支配する。

小鉢によそう手が止まっていると、結衣の目の前に重ねたタッパーが置かれた。
ハッとした結衣に、美子さんが優しく声をかける。

「気になるんでしょ?
行って確認できることなんだったら、会社に行ってらっしゃいよ」

「でも…」

「そんな顔して。ご飯食べられないでしょ。
さ、今日のご飯は持って帰ったらいいわよ。

そうだ、せっかく持ち帰るなら部長さんにお昼の差し入れでもしてみたら?いつものタッパーで申し訳ないんだけど。
部長さんがいらないようだったら、結衣ちゃんの晩御飯にしたらいいのよ」

ふふっと笑うと、美子さんは結衣の返事も待たずにテキパキとタッパーに詰め分ける。

おかず毎に小分けしたタッパーとしっかりご飯もつけて、まるでデリバリーのセットのように一人前ずつのニセットを紙袋に入れ分けてくれた。

「ほらっ早くしないとお昼になるわよ、いってらっしゃい」

「はい…」

結衣は、美子さんに店の出入口まで追い立てられると、マスターと美子さんに見送られ、戸惑いながらもオフィスへ向かうことにした。