土曜日。
美子さんとのいつもの時間にオアシスを訪れた。
店の扉を開けると芳ばしい焙煎の香りが広がる。
「おはようございます。
マスター今日もお世話になります。
いつも営業時間前の忙しい時にすみません。
「いやいや、結衣ちゃんの休みの日にいつも呼び出して悪いね。
結衣ちゃんがきてくれると食卓が華やかになってうれしいよ。
昼食楽しみにしてるよ」
豆を捌く手を止め、マスターが微笑む。
マスターと挨拶を交わすと結衣はキッチンを通り抜けて裏に廻ると外階段から2階へと上がる。
マスターと美子さんの自宅だ。
いつものように玄関で声をかけてキッチンへと向かう。
「さあ、今日はぶり大根と、お野菜でいくつか作りましょうか」
今日も結衣が来た時には、すでに料理教室のように準備が整っていて、美子さんにコツを教えてもらいながら切ったり和えたりと調理を進めていく。
美子さんの料理はどれも美味しい。
結衣は料理は嫌いではないのだが、あまりレパートリーがない。だから、こうして美子さんと一緒に料理をするのは結衣の休日のご飯にもなり、何より料理を教えもらえる貴重な時間だ。
「美子さんこれ美味しい!」
食べてみて、と勧められた副菜の和えものを一口つまみ、思わず頬が緩む。
「そうでしょ?
下味だけにしておくとアレンジしやすいから作り置きにおすすめよ。
柚子胡椒味噌にしたけど、シンプルにお醤油とか、マヨネーズにも合うのよ」
器に盛り付けながらあれこれと料理の話をしてくれるのが楽しい。
初めてお誘いを受けた頃、材料費をいくら渡せばよいか戸惑いながら毎度封筒を差し出していたが「孫とご飯食べるようなもんだから気にしないで」と受け取ってくれなかった。美子さんは二人分だと余るからちょうどいいというが、料理上手な美子さんが下手なやりくりはしないだろう。
代わりにと言えないかもしれないが、美子さんの買い物を手伝ったり、スマホの使い方を教えたりと、結衣が出来ることで手伝いをしている。
「結衣ちゃん携帯が鳴ってるわよ」
美子さんに声をかけられ結衣は盛り付けていた小鉢を置き、バッグからスマホを取り出した。
見るとオフィスからの着信だ。
アシスタントの結衣に休みの日に連絡が入ることはない。
休みなのに、誰だろう。
緊急の要件なのかもしれない、と不安になりながら電話に出る。
「湊だ。
田宮さん休みの日にすまない。
本来電話すべきでない日だし、疑って当然だ。
休みのところ申し訳ないが、昨日もらった提案書の検証値をあと数年遡って確認したいんだが」
申し訳なさそうな部長の声に、提案書についての弥生さんからの指示を思い出した。
『検証値は遡って必要な範囲を確認した結果だと記録しておいてね』
簡単なことなのに確認のみで記録を残し忘れている。
そしてそのまま部長へと提出していた。
「申し訳ございません!
あのっ資料はデスクの後ろのキャビネットにございます。
記載したデータより前は、紙ベースの保管資料のみで、データで確認できる状態に、なっておりません、申し訳ございません」
電話口で思わず頭を下げてしまう。
「田宮さんが作成したものはちゃんと出来ているから、気にしなくて大丈夫だ。
数字が確認できれば問題ないよ。
ああ、これか、ありがとう。
休みの日にすまなかった」
美子さんとのいつもの時間にオアシスを訪れた。
店の扉を開けると芳ばしい焙煎の香りが広がる。
「おはようございます。
マスター今日もお世話になります。
いつも営業時間前の忙しい時にすみません。
「いやいや、結衣ちゃんの休みの日にいつも呼び出して悪いね。
結衣ちゃんがきてくれると食卓が華やかになってうれしいよ。
昼食楽しみにしてるよ」
豆を捌く手を止め、マスターが微笑む。
マスターと挨拶を交わすと結衣はキッチンを通り抜けて裏に廻ると外階段から2階へと上がる。
マスターと美子さんの自宅だ。
いつものように玄関で声をかけてキッチンへと向かう。
「さあ、今日はぶり大根と、お野菜でいくつか作りましょうか」
今日も結衣が来た時には、すでに料理教室のように準備が整っていて、美子さんにコツを教えてもらいながら切ったり和えたりと調理を進めていく。
美子さんの料理はどれも美味しい。
結衣は料理は嫌いではないのだが、あまりレパートリーがない。だから、こうして美子さんと一緒に料理をするのは結衣の休日のご飯にもなり、何より料理を教えもらえる貴重な時間だ。
「美子さんこれ美味しい!」
食べてみて、と勧められた副菜の和えものを一口つまみ、思わず頬が緩む。
「そうでしょ?
下味だけにしておくとアレンジしやすいから作り置きにおすすめよ。
柚子胡椒味噌にしたけど、シンプルにお醤油とか、マヨネーズにも合うのよ」
器に盛り付けながらあれこれと料理の話をしてくれるのが楽しい。
初めてお誘いを受けた頃、材料費をいくら渡せばよいか戸惑いながら毎度封筒を差し出していたが「孫とご飯食べるようなもんだから気にしないで」と受け取ってくれなかった。美子さんは二人分だと余るからちょうどいいというが、料理上手な美子さんが下手なやりくりはしないだろう。
代わりにと言えないかもしれないが、美子さんの買い物を手伝ったり、スマホの使い方を教えたりと、結衣が出来ることで手伝いをしている。
「結衣ちゃん携帯が鳴ってるわよ」
美子さんに声をかけられ結衣は盛り付けていた小鉢を置き、バッグからスマホを取り出した。
見るとオフィスからの着信だ。
アシスタントの結衣に休みの日に連絡が入ることはない。
休みなのに、誰だろう。
緊急の要件なのかもしれない、と不安になりながら電話に出る。
「湊だ。
田宮さん休みの日にすまない。
本来電話すべきでない日だし、疑って当然だ。
休みのところ申し訳ないが、昨日もらった提案書の検証値をあと数年遡って確認したいんだが」
申し訳なさそうな部長の声に、提案書についての弥生さんからの指示を思い出した。
『検証値は遡って必要な範囲を確認した結果だと記録しておいてね』
簡単なことなのに確認のみで記録を残し忘れている。
そしてそのまま部長へと提出していた。
「申し訳ございません!
あのっ資料はデスクの後ろのキャビネットにございます。
記載したデータより前は、紙ベースの保管資料のみで、データで確認できる状態に、なっておりません、申し訳ございません」
電話口で思わず頭を下げてしまう。
「田宮さんが作成したものはちゃんと出来ているから、気にしなくて大丈夫だ。
数字が確認できれば問題ないよ。
ああ、これか、ありがとう。
休みの日にすまなかった」

