奇妙な噂のある図書館があった。
朝、職員が図書館へ入ると、室内が荒らされていることがあるらしい。本が滅茶苦茶に散乱し、棚も微妙にずれていたりする。それが一度だけではなく、今まで何度もあったらしいのだ。お化けの仕業なのか、はたまた、なんらかの犯罪組織がわれわれの想像もつかないことを企んでいるのか、いろいろなうわさが飛び交っていた。なお、このうわさは隠ぺいされているようで、実際にその現場を見た者は周りにはいなかった。
本当かどうかは分からないが、僕はそれが気になって、今、図書館へ向かっている。ちなみに僕は勉強嫌いで、図書館などへはほとんど行ったことがない。その僕が図書館へ向かうぐらい、このうわさには興味があるのだ。
「高彦!」
後ろから大きな声がした。振り向くと、そこには幼馴染の吉川 香織がいた。
「どこへ行くの?」
「ちょっと図書館へ」
僕がそう言うと、香織は不思議そうな顔をした。おそらく、普段、図書館へ行くような人ではないのに何故なんだって思っているのだろう。
「ほらっ、例のうわさがあるじゃん」
「あ~、そうなんだ。そうじゃなきゃ、図書館へ行くはずないよね」
全く失礼な返答である。しかし、それは事実である。
「あっ、私は用事があるので、これで」
そう言って、香織は去っていった。まあ、うわさなどには興味がないのだろう。
とりあえず、図書館を目指そう。目指すって程の距離でもないが。
それにしても、この辺の土地柄はまだまだ古く、壁がコンクリートブロックだったりするところもある。今、僕が歩いている右側の壁もそうだ。ちょっと年季が入ったような感じで、ところどころ目立つような汚れもある。その壁が延々と続いている。
「はっ?」
そんなことをぼんやり考えていたら、視界の左側になにやら足のようなものが見えた。顔に当たりそうになったが、ギリギリ大丈夫だった。
いきなり誰かが僕に飛び蹴りを食らわせに来たのか。顔の高さに足が来るなんて、そうとうだぞ。
そう思っていると、足の本体(身体)が横の壁に着地した。
垂直に着地して、明らかにおかしい。そして、よく見るとそれは髪の長い女の子だった。香織と同じぐらいの歳頃かな。
「ごめんなさい。いそいでいるので、これで。では!」
そう言いながら、忍者のように垂直のまま、壁を走って、そして、僕の視界から消え去った。
……
一瞬、何のことだがわからなかった。昔から、この街は少しおかしいと思っていたが、忍者もいたのか。
まあ、よくわからないことは置いておいて、僕はそのまま図書館へ向かった。
もう夕方になるころで、太陽もだいぶ沈んでいる。地面に映る自身の影も長くなっていた。
図書館に着いたが、見た感じは普通の建物だ。なにか変わったこともなさそうだった。
中へ入ると、一見普通な感じだったけど、棚が数ミリずれた跡があった。うわさどおり誰かが棚を倒したり、本を荒らしたりしたのだろうか。
図書館の司書は何も言わず働いている。うわさを隠しているのか。そもそも本が荒らされている事実など、元からなかったのか。
館内を歩いてみたが、別に何の収穫もなく、うろうろとしている間に図書館は閉館した。
翌日。
登校し、椅子に座り、1時間目の授業の用意をしていると、香織が話しかけてきた。
「うわさの真相には迫れましたか?」
香織の顔はもちろん、『わかってないでしょ』という表情だった。
僕は香織の期待通りに返答をする。
「全くわからなかったよ」
「まあ、一回行ったぐらいじゃわからないよね。これからも図書館へ通うの?」
僕は返答に困った。もともと図書館なんて別に好きじゃないし。
「うーん。どうかな。わからない」
行くつもりはあまりないが、僕はあいまいに返答をした。
朝、職員が図書館へ入ると、室内が荒らされていることがあるらしい。本が滅茶苦茶に散乱し、棚も微妙にずれていたりする。それが一度だけではなく、今まで何度もあったらしいのだ。お化けの仕業なのか、はたまた、なんらかの犯罪組織がわれわれの想像もつかないことを企んでいるのか、いろいろなうわさが飛び交っていた。なお、このうわさは隠ぺいされているようで、実際にその現場を見た者は周りにはいなかった。
本当かどうかは分からないが、僕はそれが気になって、今、図書館へ向かっている。ちなみに僕は勉強嫌いで、図書館などへはほとんど行ったことがない。その僕が図書館へ向かうぐらい、このうわさには興味があるのだ。
「高彦!」
後ろから大きな声がした。振り向くと、そこには幼馴染の吉川 香織がいた。
「どこへ行くの?」
「ちょっと図書館へ」
僕がそう言うと、香織は不思議そうな顔をした。おそらく、普段、図書館へ行くような人ではないのに何故なんだって思っているのだろう。
「ほらっ、例のうわさがあるじゃん」
「あ~、そうなんだ。そうじゃなきゃ、図書館へ行くはずないよね」
全く失礼な返答である。しかし、それは事実である。
「あっ、私は用事があるので、これで」
そう言って、香織は去っていった。まあ、うわさなどには興味がないのだろう。
とりあえず、図書館を目指そう。目指すって程の距離でもないが。
それにしても、この辺の土地柄はまだまだ古く、壁がコンクリートブロックだったりするところもある。今、僕が歩いている右側の壁もそうだ。ちょっと年季が入ったような感じで、ところどころ目立つような汚れもある。その壁が延々と続いている。
「はっ?」
そんなことをぼんやり考えていたら、視界の左側になにやら足のようなものが見えた。顔に当たりそうになったが、ギリギリ大丈夫だった。
いきなり誰かが僕に飛び蹴りを食らわせに来たのか。顔の高さに足が来るなんて、そうとうだぞ。
そう思っていると、足の本体(身体)が横の壁に着地した。
垂直に着地して、明らかにおかしい。そして、よく見るとそれは髪の長い女の子だった。香織と同じぐらいの歳頃かな。
「ごめんなさい。いそいでいるので、これで。では!」
そう言いながら、忍者のように垂直のまま、壁を走って、そして、僕の視界から消え去った。
……
一瞬、何のことだがわからなかった。昔から、この街は少しおかしいと思っていたが、忍者もいたのか。
まあ、よくわからないことは置いておいて、僕はそのまま図書館へ向かった。
もう夕方になるころで、太陽もだいぶ沈んでいる。地面に映る自身の影も長くなっていた。
図書館に着いたが、見た感じは普通の建物だ。なにか変わったこともなさそうだった。
中へ入ると、一見普通な感じだったけど、棚が数ミリずれた跡があった。うわさどおり誰かが棚を倒したり、本を荒らしたりしたのだろうか。
図書館の司書は何も言わず働いている。うわさを隠しているのか。そもそも本が荒らされている事実など、元からなかったのか。
館内を歩いてみたが、別に何の収穫もなく、うろうろとしている間に図書館は閉館した。
翌日。
登校し、椅子に座り、1時間目の授業の用意をしていると、香織が話しかけてきた。
「うわさの真相には迫れましたか?」
香織の顔はもちろん、『わかってないでしょ』という表情だった。
僕は香織の期待通りに返答をする。
「全くわからなかったよ」
「まあ、一回行ったぐらいじゃわからないよね。これからも図書館へ通うの?」
僕は返答に困った。もともと図書館なんて別に好きじゃないし。
「うーん。どうかな。わからない」
行くつもりはあまりないが、僕はあいまいに返答をした。



