オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

今日は…

部署の飲み会だった。

行きたくなかった。

今日もストーリーを進めたり素材集めたり、他にもできる事が色々あるみたいだから、早く帰ってゲームをやりたかった。

とりあえず一次会が終わったら速やかに帰ろう。

私は適当に周りの人と話を合わせて、早く時間が過ぎるのを待った。

もしかしたらハヤテさん、もうログインして私の事を待ってるかな…

ハヤテさん…一体どんな人なんだろう。

オンラインゲームの世界…

年齢も性別もわからない。

もしかしたら海外の人かもしれない。

でも、たとえそれが何であれ、あの世界を楽しく遊べるのはハヤテさんがいるからで…

そういう現実世界の肩書きは関係ない。

ゲームのアプリを立ち上げて、メッセージがないか確認したりしていた。

トイレに行こうと立ち上がって、歩こうとしたら、羽山さんとすれ違いそうになった。

今度はぶつからないようにしないと…。

その時、私のスマホが手から滑り落ちた。

羽山さんがそれを拾ってくれた。

「あ…ありがとうございます!」

私がスマホを受け取ろうとした時、羽山さんの表情が一瞬変わった気がした。

画面には、“あまる”のステータス画面が映っていたままだった。

あ…エタクエやってるのバレたかも…。

でも別にバレたって、羽山さんが何かする訳でもないからいいか。

羽山さんは静かにスマホを手渡してくれた。

「…気をつけろ」

羽山さんはその場をすぐ離れていった。

その時の羽山さんの顔はいつもと違って、少し戸惑っているような感じだった。

気のせいだろうか。

◇ ◇ ◇

急いで家に帰った後、ゲームにログインしてハヤテがいるか確認した。

でも、ハヤテはいなかった。

もう23時になりそう…。

昨日はギリギリ会えたけど今日は厳しいかな…

私は少しだけフィールド探索してから寝ようとウロウロしていた。

日付が回りそうになって、流石にもう寝ようとした時、ハヤテからチャットが来た。

『遅れてごめん!』

あ!来た!

でも…

流石にもう寝ないと…

『ごめん、私もう寝ようと思ってて…』

ハヤテは暫く黙ったままだった。

『わかった。また明日遊ぼう!』

手を振るジェスチャーをしてくれた。

『うん!また明日!』

私が落ちようとした寸前、ハヤテが少しあまるに近づいてきた。

『あまる、おやすみ』

その距離が、いつもより近くて、また緊張してしまった。

ハヤテさん…

やっぱりどんな人か凄く気になる。

◇ ◇ ◇

その日、私は寝不足の影響か、仕事でミスをしてしまった。

そのせいで、修正作業に追われて、終わるのはかなり遅くなる…

ちょっとゲームに入り込みすぎた…

ここ最近毎日遅くまで遊んでる…。

日常生活に支障が出るんじゃやばい。

これからは程々にしないと…。

とにかく今日は、帰ったら直ぐ寝よう。

もうオフィスには私しかいない。

その時足音が聞こえた。

羽山さんが来て、私と目が合った。

「まだ仕事してたのか…」

羽山さんは忘れ物をしたようだった。

「どうした?」

「ちょっとミスをしてしまって…」

眠くて集中できないから、明日早く来るかな…

「俺でできるものがあればやる」

「いえ、大丈夫です。これ事務の方じゃなきゃ判断できないものでして…」

羽山さんは少し困ったような表情を見せた。

「ごめん」

…なぜ羽山さんが謝るのだろうか。

「寝不足だろ?」

バレていた…

「寝不足なのは確かなんですけど…羽山さんのせいじゃないですよ…?」

ゲームのやりすぎて寝不足なだけで…

羽山さんは何か言いたそうな表情をしていたけど、結局何も言わなかった。

そのまま少し遠くの席に座った。

え?

「何時に終わるかわかりませんよ…?」

「それは気にしなくていい。」

羽山さんのその行動に、私は少し驚いた。

上司として私の事気遣ってくれてるのかな…?

「ありがとうございます」

その後、羽山さんが待っていてくれるおかげで、なんだか心強くて、仕事は思ったより早く済んだ。

「お待たせして申し訳ありませんでした!」

羽山さんに深々と頭を下げた。

「一人で残業してる部下放置できないだろ」

普段は口数が少ないけど、ちゃんと気にしてくれてるんだな…。

その後、駅まで帰る途中、また特に何も話さず羽山さんと歩いていた。

その時、羽山さんに思い切り抱き寄せられた。

え!?

そしたら後ろからすごいスピードで自転車が通り過ぎた。

自転車に乗ってた人は、スマホを見ながら運転していた。

「びっくりした…!ありがとうございます」

羽山さんは私の顔を見て優しく微笑んだ。

「…天川は目が離せないな」

胸がぎゅーっと苦しくなった。

やばいこれは…ちょっと…距離が縮まりすぎて…心が追いつかない…!

そのまま何事もなかったかのように二人で歩いていたけど…

私の頭は大混乱だった。