※こちらは番外編になります。
羽山さんと異動で離ればなれにならなくて済んだけど、もう上司と部下じゃない、同じ部署じゃない、フロアも違う。
あの時は、仕事中もゲームも羽山さんと一緒だった。
結婚して幸せだけど、寂しく思う時がある。
その日、羽山さんが残業で遅かったから、もう寝る準備をしてソファに座ってスマホで電子書籍を読んでいた時にオススメででてきたコミック。
タイトルに並ぶ"溺愛"ワード。
溺愛…?
とは
私は禁断の扉を開いた。
そこには…私が求めていたものが広がっていた。
ああ、このシチュエーション最高…
このセリフ言われたい…
こんな事されたい…
オフィスの中で広がる甘ーい恋の展開。
私だって、羽山さんに何もされなかったわけじゃない。
ただ、こんな、大胆でストレートな事はされた事がない。
コソコソと恋愛し、押さえ込んでた感情…
私もこんなオフィスラブがしたかった!!
そこに羽山さんがちょうど帰ってきた。
「ただいま」
くたびれた羽山さんを見て、何故かまたキュンとする自分の事はさておき
「羽山さんこれ見てください!」
私は電子コミックを見せた。
「このシーン!この言葉!この行動!どう思いますか?」
羽山さんは興味なさそうに見ていた。
「そんな事してたら会社から追放されるだろ….」
そんな現実的な話は聞きたくない!
「御曹司だからいいんです!」
「俺、御曹司じゃない」
そうだけど…!
「でも御曹司じゃなくてもこんなに沢山ありますよ!上司とか!」
羽山さんはご飯を食べている。
「ふーん」
羽山さんも別にスマホを見ていた。
最近ハマってるスマホゲーム。
私はスマホを取り上げた。
「私はオフィスで会えなくて寂しいんです!」
凄く面倒くさそうな顔をしている羽山さん。
「これは…倦怠期ですか…?」
羽山さんはもう…私の事…
私はベッドの中に潜って涙を流していた。
羽山さんはお風呂に入ったあと、ベッドの中に入ってきた。
私の事を後ろから抱きしめてくれた。
「俺も瑠美とあまり会えなくて寂しいよ」
落ち着いたら涙が余計に溢れて、私も羽山さんに抱きついて、しくしく泣きながら、眠った。
◇ ◇ ◇
次の日、朝起きたら羽山さんがもういなかった。
あれ、今日って早朝出勤?
特に聞いてなかったけど…。
私は準備をして、会社に向かった。
ビルについて、エレベーター乗って、総務部に行って、デスクに座って仕事開始。
それから一時間くらい経った時、突然羽山さんが総務部に来た。
「天川ちょっといいか?」
「はい?」
基本的に会社では旧姓で呼ばれてる。
なんで羽山さんが総務に?
しかも私?
私は羽山さんについて行った。
会議室に連れて行かれた。
心なしか、羽山さんはいつもと雰囲気が違う。
冷静で落ち着いた雰囲気じゃなくて…
自信に満ち溢れているような、余裕のある動き。
心なしかスーツもハイブランドそうなスタイリッシュなデザイン。
髪型も違う。
何があったの?
「羽山さんどうしたんですか…?」
羽山さんが振り返ったと思ったら、私を強く抱き寄せた。
「お前に会えなくて気が狂いそうだ」
「…は?」
羽山さんの様子がおかしい。
「羽山さん、仕事は…?抜けてきたんですか?」
羽山さんの唇が首筋をなぞった。
「な!何するんですか!?」
こんなところで!
家ならともかく!
「仕事なんてどうでもいい。お前の方が大事だから」
羽山さん…
どうしよう…凄く嬉しい…
でも、なんか、これは羽山さんらしくない。
「羽山さん、私達また家で会えるじゃないですか」
「そんなの待てない」
羽山さんが私の服を脱がし始めた。
「羽山さん何してるんですか…?」
こんなの羽山さんじゃない!
私は突き飛ばしてしまった。
「瑠美…」
羽山さんは戸惑っている。
「俺の事愛してないのかよ」
「いえ、そういう事じゃなくて…」
私達は公私混同をなるべく避けてここまでやってきたわけで…それをいきなり壊してくるのは変だ。
「お前が望んだんだろ?」
「え?」
「俺に溺愛されたいって」
──確かに昨日そんなコミックを見せた。
そのまま羽山さんに壁ドンをされた。
「こういうのがいいんじゃないのか?」
う、こんな羽山さんは見た事がない…!
ドキドキする!
って、ときめいてる場合じゃない!
「あれはフィクションの世界ですよ!」
その後顎を掬われてキスをされた。
く、苦しい…!!
「羽山さん…おかしいですこんなの…」
いつもの羽山さんじゃない…
羽山さんがネクタイを緩めた。
「え…?」
それはまずい
まずいまずいまずい
「何しようとしてるんですか…?」
今度は床に押し倒された。
「お前が昨日見せてきたコミックのシーン」
あ…確か…あった、そういうシーン…
え、って事は…
「いやまずいです!それを本当にしては!」
見つかったら、せっかく同じオフィスにしてもらったのに、降格させられるか飛ばされるか何かしら処分される!
「大丈夫、俺、御曹司だから」
………
理解した。
これは夢だと。
こんな風なシーンにドキドキして妄想してたけど、こんなの羽山さんじゃない。
でも…夢なら自由だ。
「俺だけを見ろ。俺だけを感じろ。」
鋭い目で私を支配しようとするような羽山さん。
「はい、羽山さんしか見ないです」
羽山御曹司様に従順な一般OLになる。
「いい子だ」
別人のような羽山さんに身も心も支配されて、ああこんな羽山さんもいい…
と思ってたのに、ふと、あの少し恥ずかしそうに私に想いを伝える羽山さんを思い出して、胸が苦しくなった。
「やっぱりいつもの羽山さんがいいです!」
なんの恥じらいもない羽山さんが見つめてくる。
「それでいいのか?」
「はい…」
その時、その羽山さんがボヤけてきて──
気が付いたらベッドの上にいた。
朝ごはんのいい匂いがする。
寝ぼけ眼でゆっくりキッチンを見たら、羽山さんが朝ごはんを作っていた。
「あ、おはよう」
いつもの羽山さんの、落ち着いた穏やかな表情。
私は思わず羽山さんに抱きついた。
「私はあんな溺愛なんかいりません!」
「は?」
激しく求められて、可愛がられて、甘やかされるのはロマンチックだけど…
この落ち着いた距離感が好きなんだ。
私は羽山さんにしがみついたまま、羽山さんの匂いを嗅いで。
朝ごはんを食べて、一緒に出勤した。
やっぱり、いつもの羽山さんが1番好き。
──fin

羽山さんと異動で離ればなれにならなくて済んだけど、もう上司と部下じゃない、同じ部署じゃない、フロアも違う。
あの時は、仕事中もゲームも羽山さんと一緒だった。
結婚して幸せだけど、寂しく思う時がある。
その日、羽山さんが残業で遅かったから、もう寝る準備をしてソファに座ってスマホで電子書籍を読んでいた時にオススメででてきたコミック。
タイトルに並ぶ"溺愛"ワード。
溺愛…?
とは
私は禁断の扉を開いた。
そこには…私が求めていたものが広がっていた。
ああ、このシチュエーション最高…
このセリフ言われたい…
こんな事されたい…
オフィスの中で広がる甘ーい恋の展開。
私だって、羽山さんに何もされなかったわけじゃない。
ただ、こんな、大胆でストレートな事はされた事がない。
コソコソと恋愛し、押さえ込んでた感情…
私もこんなオフィスラブがしたかった!!
そこに羽山さんがちょうど帰ってきた。
「ただいま」
くたびれた羽山さんを見て、何故かまたキュンとする自分の事はさておき
「羽山さんこれ見てください!」
私は電子コミックを見せた。
「このシーン!この言葉!この行動!どう思いますか?」
羽山さんは興味なさそうに見ていた。
「そんな事してたら会社から追放されるだろ….」
そんな現実的な話は聞きたくない!
「御曹司だからいいんです!」
「俺、御曹司じゃない」
そうだけど…!
「でも御曹司じゃなくてもこんなに沢山ありますよ!上司とか!」
羽山さんはご飯を食べている。
「ふーん」
羽山さんも別にスマホを見ていた。
最近ハマってるスマホゲーム。
私はスマホを取り上げた。
「私はオフィスで会えなくて寂しいんです!」
凄く面倒くさそうな顔をしている羽山さん。
「これは…倦怠期ですか…?」
羽山さんはもう…私の事…
私はベッドの中に潜って涙を流していた。
羽山さんはお風呂に入ったあと、ベッドの中に入ってきた。
私の事を後ろから抱きしめてくれた。
「俺も瑠美とあまり会えなくて寂しいよ」
落ち着いたら涙が余計に溢れて、私も羽山さんに抱きついて、しくしく泣きながら、眠った。
◇ ◇ ◇
次の日、朝起きたら羽山さんがもういなかった。
あれ、今日って早朝出勤?
特に聞いてなかったけど…。
私は準備をして、会社に向かった。
ビルについて、エレベーター乗って、総務部に行って、デスクに座って仕事開始。
それから一時間くらい経った時、突然羽山さんが総務部に来た。
「天川ちょっといいか?」
「はい?」
基本的に会社では旧姓で呼ばれてる。
なんで羽山さんが総務に?
しかも私?
私は羽山さんについて行った。
会議室に連れて行かれた。
心なしか、羽山さんはいつもと雰囲気が違う。
冷静で落ち着いた雰囲気じゃなくて…
自信に満ち溢れているような、余裕のある動き。
心なしかスーツもハイブランドそうなスタイリッシュなデザイン。
髪型も違う。
何があったの?
「羽山さんどうしたんですか…?」
羽山さんが振り返ったと思ったら、私を強く抱き寄せた。
「お前に会えなくて気が狂いそうだ」
「…は?」
羽山さんの様子がおかしい。
「羽山さん、仕事は…?抜けてきたんですか?」
羽山さんの唇が首筋をなぞった。
「な!何するんですか!?」
こんなところで!
家ならともかく!
「仕事なんてどうでもいい。お前の方が大事だから」
羽山さん…
どうしよう…凄く嬉しい…
でも、なんか、これは羽山さんらしくない。
「羽山さん、私達また家で会えるじゃないですか」
「そんなの待てない」
羽山さんが私の服を脱がし始めた。
「羽山さん何してるんですか…?」
こんなの羽山さんじゃない!
私は突き飛ばしてしまった。
「瑠美…」
羽山さんは戸惑っている。
「俺の事愛してないのかよ」
「いえ、そういう事じゃなくて…」
私達は公私混同をなるべく避けてここまでやってきたわけで…それをいきなり壊してくるのは変だ。
「お前が望んだんだろ?」
「え?」
「俺に溺愛されたいって」
──確かに昨日そんなコミックを見せた。
そのまま羽山さんに壁ドンをされた。
「こういうのがいいんじゃないのか?」
う、こんな羽山さんは見た事がない…!
ドキドキする!
って、ときめいてる場合じゃない!
「あれはフィクションの世界ですよ!」
その後顎を掬われてキスをされた。
く、苦しい…!!
「羽山さん…おかしいですこんなの…」
いつもの羽山さんじゃない…
羽山さんがネクタイを緩めた。
「え…?」
それはまずい
まずいまずいまずい
「何しようとしてるんですか…?」
今度は床に押し倒された。
「お前が昨日見せてきたコミックのシーン」
あ…確か…あった、そういうシーン…
え、って事は…
「いやまずいです!それを本当にしては!」
見つかったら、せっかく同じオフィスにしてもらったのに、降格させられるか飛ばされるか何かしら処分される!
「大丈夫、俺、御曹司だから」
………
理解した。
これは夢だと。
こんな風なシーンにドキドキして妄想してたけど、こんなの羽山さんじゃない。
でも…夢なら自由だ。
「俺だけを見ろ。俺だけを感じろ。」
鋭い目で私を支配しようとするような羽山さん。
「はい、羽山さんしか見ないです」
羽山御曹司様に従順な一般OLになる。
「いい子だ」
別人のような羽山さんに身も心も支配されて、ああこんな羽山さんもいい…
と思ってたのに、ふと、あの少し恥ずかしそうに私に想いを伝える羽山さんを思い出して、胸が苦しくなった。
「やっぱりいつもの羽山さんがいいです!」
なんの恥じらいもない羽山さんが見つめてくる。
「それでいいのか?」
「はい…」
その時、その羽山さんがボヤけてきて──
気が付いたらベッドの上にいた。
朝ごはんのいい匂いがする。
寝ぼけ眼でゆっくりキッチンを見たら、羽山さんが朝ごはんを作っていた。
「あ、おはよう」
いつもの羽山さんの、落ち着いた穏やかな表情。
私は思わず羽山さんに抱きついた。
「私はあんな溺愛なんかいりません!」
「は?」
激しく求められて、可愛がられて、甘やかされるのはロマンチックだけど…
この落ち着いた距離感が好きなんだ。
私は羽山さんにしがみついたまま、羽山さんの匂いを嗅いで。
朝ごはんを食べて、一緒に出勤した。
やっぱり、いつもの羽山さんが1番好き。
──fin




