オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

新年度になって、配置換えがあったりしたけど、私と羽山さんは変わらず同じグループだった。

ただ…

羽山さんの仕事量が倍増して、打ち合わせや外出などでほとんど会社にいない。

会社で会う事はほとんどなくなってしまった。

平日も、羽山さんがログインできる回数が減ってしまった。

土日だけ会う日々が続いて、それが二人にとって貴重な時間だった。

エタクエも二人で遊びたいけど、それよりも、私と羽山さんの時間を大切にしたかった。

──そんな矢先…

とうとう羽山さんが参ってしまい、高熱を出して寝込んでしまった。

心配で心配で仕事を休んで看病したかったけど…

そんな訳にはいかない。

私はとにかく仕事を早く終わらせて羽山さんの家に行った。

「忙しいのに悪い…」

「いえ!全然気にしないで下さい!」

だって、恋人の危機なんだから、当然!

私は気合を入れて、羽山さんが食べられるものや、洗濯物や、必要なものを買いに行ったりしていた。

「なんか…こういう時に誰かがいるって、安心するな」

「そうですね…体調悪い時って心細くなりますよね」

あっという間に終電が近くなってきた。

「すみません…今日はそろそろ帰ります」

その瞬間羽山さんに手を掴まれた。

「ああやっぱりだめだ」

だめ…って?

「どうしたんですか?」

「引き留めてはダメだって、明日も仕事ってわかってる。でも、行かないで欲しいって、思ってしまう」

私も側にいたい。

羽山さんを一人にしたくない。

「いいですよ、私、今日泊まりますよ」

「いや、いい。ごめん。流石に上司としてそんな事お願いするのは間違ってる」

上司とか部下とか…

「だったらもう、上司と部下、やめましょう!」

「は!?」

「それが原因で、羽山さんと私がまともに一緒にいられないなら、私はもう、部下じゃなくていいです!」

その後暫く沈黙が続いた。

「それって…辞めるって事?」

「はい。違う場所に行けば、余計な事考えないで会いますし」

羽山さんが手を額に乗せて考えていた。

「いや。それはやめてくれ」

「え!?」

だって

こんなのもう辛いし、お互い。

「なんでですか?」

羽山さんが私の頬に手を当てた。

悲しそうな表情だった。

「俺の目の届かない所に行くなよ」

胸が張り裂けそうだった。

涙がたくさん溢れてしまった。

「じゃあどうすればいいんですか…?」

このまま…ただ遠くから見守ってるの?

困ってても側にいられなくて。

「瑠美、結婚して」


「え…」

突然羽山さんから出た言葉に頭が真っ白になった。

結婚って…

「こんな時に言ってごめん。でももう俺も限界だった」

羽山さんにぎゅっと抱きしめられた。

「一緒にいよう。ずっと」

羽山さん…

体がすごい熱い…

「ありがとうございます。すごく嬉しいです」

私はそっと羽山さんをまた寝かせた。

「まず、ちゃんと、体調回復に専念してください。それからまた、ちゃんと話したいです」

羽山さんと手を握ったまま、私はずっと、羽山さんの家に一晩中いた。

朝起きて、羽山さんの熱を測ったら、熱がかなり下がっていた。

「やった!!」

羽山さんが復活してきた!

でも…

「また同じような仕事のやり方してたら、また同じように倒れてしまいますよ…」

羽山さんは考えていた。

「その辺は…色々会社の人と相談してみる」

私はそっと羽山さんにキスをして、会社に行った。

──結婚…

羽山さんの側に居られるのは嬉しい。

ただ、そうなった場合、私たちがどうなるのか、不安だった。

でももう私の心は決まっていた。

決意を胸に、また私は歩き出す。