オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

駅のホームに降りて、やっと東京の空気が吸えた。

私は東京の空気の方が好きだ。

自由を感じる。

そして羽山さんがいる。

今日は土曜日。

羽山さんは『駅で待ってる』ってさっきメッセージをくれたけど、どこだろう。

改札前でキョロキョロしていた。

「瑠美」

後ろから聞き覚えのある声が。

羽山さんが立っていた。

たった一日会えなかっただけなのに…

まるで何日も離れ離れだったみたい。

「羽山さん…会いたかったです!」

羽山さんはゆっくり頷いた。

でも何も言ってくれない…

二人で電車に乗った。

電車は空いていた。

「…あの男何?」

羽山さんがやっと話してくれた…!

顔は不機嫌だけど…

「えーと、あの人は地元の幼馴染みたいなものです」

幼馴染っていうほど仲良くないけど、まあ適当に…

「幼馴染…なんか、起こりそうだよな…」

何が??

「あの、あの人はもう結婚するみたいなので安心してください!」

羽山さんは少しだけ安心したような表情をした。

「俺は…もっと、もっと、俺を必要として欲しい」

へ?

「どういう事ですか?」

羽山さんが私の方を向いた。

「俺以外見えないって、なって欲しい」

顔から火が出そうだった。

もう既にそうなんだけど…

「ごめん…ちょっと…前の事、少しフラッシュバックして」

それは…

元カノさんとの事かな。

「もう裏切られたくない」

深刻な表情だった。

「どうすれば信じてくれますか?」

羽山さんは悩んでいる。

私はいい事を思いついた。

「羽山さん、会社の人に言うのはどうですか?」

「は!?」

あれ、結構いい案だと思ったんだけどな。

「だって、みんな知ってれば安心かなーと」

って、自分からみんなに言ってどうするだよ…

自分でツッコんだ。

「流石にそれはぶっ飛びすぎるけど…」

羽山さんが私の手を握った。

「その言葉でなんか安心した」

羽山さんが少し落ち着いてよかった。


その後、私の家に着いて二人でのんびりしようとしたら…私は羽山さんに追い詰められてしまった。

「どのくらい俺の事好きなんだよ」

さっき落ち着いたはずなのに、なんでまたこうなってしまったの?

「羽山さん落ち着いてください!私は羽山さんの事しか考えてないですし」

どうしたら羽山さんを安心させられるんだろう…

「羽山さん、じゃあ私証明してみます」

私が思いつく単純で精一杯の愛情表現…

私は全て曝け出して、羽山さんを抱きしめた。

愛情を言葉でちゃんと伝えて、そして、重なり合ったあと──

全てを受け止めた。

それが信頼の証になるかはわからないけど、私は覚悟の上だった。

横たわる私を羽山さんは抱きしめていた。

「ごめん…あんなことさせて」

「大丈夫です。羽山さんが信じてくれたなら」

羽山さんが私のお腹に触れた。

「病院行く…?」

「いえ…どういう風になっても私は大丈夫なので」

なんでこんな事をしたのかってのは…

私はもうそういう覚悟があるって事を伝えたくて…それが本気だって事も。

どんな未来でも、羽山さんがそばに居てくれるなら大丈夫だと思った。

羽山さんの過去ははっきりわからないけど、私を信頼して欲しかった。

「瑠美…ありがとう」

羽山さんの今までに見た事がないような、とても優しい笑顔。

私は大丈夫。

私は幸せだ。