オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

その日、同じ部署の先輩の結婚式だった。

私が新人の頃、何度も挫けそうになった時支えてくれた人。

心から尊敬していて、この人がいるから営業事務が回っているような…

とても頼りになる先輩。

先輩の話を羽山さんにした時、

「あの人、あまり説明しなくても先回りして色々してくれるな」

って言っていて…

こんな人に私も将来なりたいと思って、先輩を目標に頑張っている。

先輩は大学の同級生との結婚だった。

いつものキリッとした先輩と違って、華やかでとても綺麗で、幸せそうな表情をしてて、旦那さんもとても優しそうな人で、凄い素敵な結婚式だった。

その後の二次会で先輩に声をかけられた。

「天川さん、羽山さんと付き合ってるでしょ?」

………なんでバレてるの?

「先輩…なんでそう思うんですか?」

「天川さんが羽山さん見てる目、ハートになってるよ」

先輩に笑われた…

恥ずかしい…

「羽山さんも天川さんの事気にしてるのわかるし」

何も言ってないのに、いつもと変わらずやってるのに、どうしてわかってしまうのか。

「先輩…ヤバいですよね…どうしたらいいですか?」

なんでこんな時にこんな弱音を…

「もう結婚すればいいんじゃない?」

へ?

「先輩それはちょっと極端な発想では…?」

「こそこそ付き合ってるよりいいと思うよ。まあ二人がどこまで本気か知らないけどね」

先輩はそれだけ言って、行ってしまった。

もっと気を引き締めないとダメだ…。

先輩は鋭いからわかるけど、他の人に丸わかりは嫌だ。

二次会が終わって解散になって、自宅に帰る途中、羽山さんが駅の改札前に立っていた。

嬉しくて急いで羽山さんの所へ行って、腕を組んでしまって、その後我に返った。

「羽山さんヤバいです!先輩にバレてました!」

羽山さんは特に動揺はしてなかった。

「瑠美は感情丸わかりだからな」

これでも隠してるつもりなのに…!

「でも羽山さんの事も言ってましたよ。私の事気にしてるって」

「…それは気のせいだろ」

自覚がない…!

流石に…直属の上司と部下。

バレたらどちらかが異動はほぼ確実だ。

鈴木さんと先輩は言いふらしたりしなそうだけど…

「異動になったとして、瑠美はどうする?」

「それは…」

離れ離れになる可能性もあるから、そうしたら…

「ごめん、困らせた。それは考えるのやめよう」

羽山さんと、そのまま私の家まで歩いてる間考えていた。

もしどちらか異動するとしたら…

そしたら私はどうしよう。

まだ私達は付き合ってるだけ。

それで、離れたくないからって、例えば今の会社を辞めて転職したとして…

私達がその後どうなるかってのはわからない。

上手くいかなかったら、そのまま、あまり知らない土地に居続けるの?

また転職するの?

キャリアを捨てて、恋愛の為にそこまでするのはリスクが大きい。

ただ、まだ起きてない事を思い悩んでも仕方ない。

家に着いた後、

「送ってくれてありがとうございます」

確か羽山さんは明日朝イチで仕事があるって言ってたから、今日はここまでだ。

ところが…羽山さんは家に入ってきた。

「どうしたんですか?」

羽山さんが思い切り私を抱きしめてきた。

「離れられると思う?」

不安だった気持ちが溢れてきた。

「離れたくないですけど…だって、私達は恋人ってだけで…」

確かなものがない。

「恋人やめる?」

え…?

「それはどういう事ですか…?」

暫く羽山さんは何も言わなかった。

「ごめん、ちょっと気持ち先走った」

羽山さんはその後、優しいキスをしてくれた。

何度も何度も。

「羽山さん…離れたくないです」

それが私の本当の気持ちだ。

堪えられない想いが溢れて…

深く深く求めた。

「明日朝早いのにごめんなさい」

羽山さんの温かい体温、匂い、感触。

羽山さんがどこかへ行ってしまったら…

もう私はダメになってしまうかもしれない。

戻れなくなるっていうのは…こういう事なんだ。


そして羽山さんは私に全てを刻んだまま、私の家を出た。

私の心を連れ去って行った。