オンラインゲームのフレンドは直属の上司だった

──加藤沙織

俺の同期だ。

明るくて容姿が良くて仕事もできて、同じ営業職をやってて、差がだんだんと開いていった。

同期だったけど、憧れていた。

それは、仕事だけではなく、異性としても。

でも同期として、他のやつらも一緒に仲良くやってた。

3年後、俺は違う支店に異動になった。

その時、偶然あいつも同じ支店に異動になった。

知らない土地に突然引っ越してきた二人。

知っている人はいなく、話し相手はお互いだけだった。

そしたらだんだんと距離が近づいてきて…

俺と沙織はそういう関係になっていた。

二人で休みの日に色んなところにでかけた。

すごく幸せだった。

──結婚しようとも思った。

異動して、2年経った時…

プロポーズをしようとしていた。

沙織との関係は順調だった。

でも、仕事は順調ではなかった。

上司がとにかく合わなかった。

俺はその時は、はっきり気持ちを言う人間だった。

何度もぶつかった。

その度に上司に罵られた。

俺は何とかそれでも仕事を続けた。

でも、先輩や後輩達は、辞めていったり休職したり…

とにかく入れ替わりが激しかった。

俺も少し参っていた時、仕事が終わって支店に戻った時…

沙織の声が聞こえた。

それはいつも仕事で聞くような声ではなくて…

俺とあいつの間でしか聞こえないはずの…

その声の方に吸い寄せられ

そっと覗いたら。

クソ上司と沙織が繋がっていた。


──絶望した。

その後の事はあまり覚えてなかった。

まず、今までのあいつの痕跡を何もかも抹消した。

部屋からもデータからも。

それでも辞めなかった理由は自分でもよくわからなかった。

ただ、あの二人のせいで自分が引き下がるのが耐えられなかった。

逆に居座るつもりだった。

俺が変わったのはそれからだった。

上司の罵倒にも、沙織の縋り付く姿にも、何も感じなくなっていた。

心を完全に閉ざした。

ただ無駄な感情を殺して仕事をしていた。

いつの間にかその上司は降格されて異動になった。

沙織と俺はその次の年、バラバラの場所に異動になった。

あの日から会話は仕事以外何もしなかった。

俺と付き合っておいて、俺が毎日上司と揉めてるのも見ておいて、強かな女だと、俺が勝手に美化して勘違いしていた事にやっと気がついた。

仕事に無駄な感情はいらないと、その時決めた。

俺は昇格して、異動先では部下ができた。

正直、上司という器ではないが、会社から命令されたから、とりあえずこなしていた。

でも、色々なストレスが一気にきて、体調を崩しかけていた時、部下の一人に声をかけられた。

「羽山さん大丈夫ですか?」

それは、まだ入社して3年目くらいの営業事務の子。

もう女はこりごりだった。

でも何故か、そいつを見るとホッとする自分がいた。

仕事ができる方ではない。

見てると人見知りで、人と話すのが苦手なオーラ全開だった。

沙織と真逆なタイプだ。

一人で何かずっと考えてたり、突然顔を押さえてたり、ニコニコして歩いてたり…

話してなくても行動だけでわかる。

計算がない…できないタイプ。

だからきっと惹かれたのかもしれない。

でもそれ以上の感情は湧かなかった。

ある日、鈴木に誘われたオンラインゲーム。

割とゲームは昔からやってたけど…最近全然やってなかったから、試しに適当にやってみて、飽きたらやめようとした。

一人でやろうとしたけど、なんとなく誰かとやってみたいと思って、フレンド募集を見ていたらでてきた

"あまる"

大体同じ部分を攻略しようとしてるのが分かったから、適当に遊んでみようとしただけで、それ以上の気持ちはなかった。

だけど、話してて楽で、久々に知らない人とじっくり話せて…

利害関係が全くなく、ただ楽しめる世界は、とてもよかった。

なんとなく、ずっと旅してくれそうだと思った"あまる"。

だから誘った。

あの星空を見せたくて。

それが、俺の"あまる"への

"ずっと一緒に旅してほしい"

気持ちの表現だった。

天川……瑠美だとわかった時はかなり驚いたけど、嫌じゃなかった。

逆に、安心した。

知りたかった。

不覚にも側にいて欲しいと思ってしまった。