雑居ビル非常口の鉄扉がギィ…と音を立て、乙女が出てくる。

「…!」

俺は震えの止まらない腕で魔槍を構えた。

俺はこの状態。

対して乙女はほぼ無傷と言っていい。

やはり弓兵との戦闘前に、乙女に手傷の一つも負わせておくべきだったか。

己の戦術の甘さに歯噛みしつつ、覚悟を決めた。

それに対し乙女は。

「寒い…今夜はまた一段と冷えるな」

スカートからスラリと伸びた健康的な脚…その太ももに鳥肌を立てて、身を縮こまらせつつ歩く。

そして隙だらけにも俺に背中を向けて鞘を拾い上げ、納刀。

「何をしている?弓兵ならばもう倒したぞ?」

その乙女のとぼけぶりに。

「……」

驚愕を覚えた。