早乙女家の一室。

制服の、胸元のリボンを引き締める。

そして机の上に置いてある得物を握り締める。

…これから私は外出する。

自ら『餌』となる為に。

…私の元に、争奪戦の招待状と共に送られてきた得物。

それは日本刀だった。

いわゆる銘刀…『大業物』と呼ばれる最上級の刀。

切れ味も強度も、この刀に勝るものはない。

私はそれを敢えて衆目に晒すように、御影市の夜の繁華街を歩いた。

…争奪戦の期間中は、どんな騒ぎを起こそうとも法に触れる事はない。

本来ならば日本刀を持ち歩いているなど真っ先に銃刀法の対象になってしまうが、私が交番を横切ろうとも、警官は一瞥するだけで私に職務質問すらかけてこない。

そして、こんな物騒な出で立ちで街中を歩き回っている者など、争奪戦の参加者以外に存在しない。

私と同じ争奪戦参加者がそれを見かければ、有無を言わさず襲い掛かってくる筈だった。