それで、と。

乙女は俺の顔を見る。

「得物は何を…?」

「それは返答しかねる」

俺は真顔で言った。

「得物を知られぬ事も戦略のうちなのだろう?」

皮肉笑いを浮かべて見せると。

「む…」

乙女は言葉を詰まらせる。

同時に俺と乙女の間に漂い始めたのは、不穏な空気。

言うまでもなく、仕掛けてきたのは乙女が最初だった。

「紅…貴方はまさか、争奪戦に参戦するつもりか…?」

「元より拒否権はないのだろう?おとなしく殺されてやるつもりはない」

不敵に笑う俺と、見据える乙女。

屋上を凍りつかせるほどの、密度の濃い空間が形成される。

それは…言い逃れもできまい。

明らかに『殺気』であった。