御影の王

もう誰にも止める事はできない。

凄絶とも言える打ち合いの音が、剣道場に響き渡った。

互いに互角。

ただの一本も相手に打ち込まれず、また打ち込む事もない。

聞こえ続ける乾いた打ち合いの音は、まるで事前に取り決められた約束組み手のようであり、よく出来た音楽のようでもあった。

…紅は、おかしな箒の扱い方をしていた。

穂先を私に向け、右手で柄の中央を、左手で柄尻辺りを握り、突き出したり払ったりして攻撃、防御を行う。

それは、槍術の動作に酷似していた。

数十合の攻防の後。

「紅」

私は一旦距離を置く。

「貴方、武道の経験は?」

「皆無だ」

涼しい顔をして彼が答える。

「嘘をつけ。その箒の扱いは何だ。槍術のそれではないか」

「見様見真似だ。長物ならばこう扱うのが一番効率がよかろう」

驚くべきセンスだ。

本能的に得物の適した扱い方を察したと言うのか。