届けたい音、届かない想い~The sound I want to deliver, the feelings that cannot reach.~

夏の夜は、まだあかるくて、駅には人の気配がまばらだった。

結来たちは、ホームのベンチに並んでもたれていた。

結来は、先生の言葉が、まだ胸の奥に残っていた。

「先生、優しかったね」  

結来がぽつりと言う。

「うん。なんか、声かけてくれると嬉しいよね」  

心華も、少し照れたように笑った。

結来は、それにつられて、口角が緩む。

ふたりは並んで歩きながら、しばらく黙った。  

駅までの道は、いつもより少しだけ短く感じた。

電車を待つホームで、結来はスマホを取り出した。  

何気なくSNSを開いて、#吹奏楽 #合奏 #文化祭 検索をかけた。  

検索でヒットしたリールを見ていると、ひとつのアカウントに目が留まった。

白いカップに乗った猫のラテアート。

アカウント名は、「karen_lilt3」

びっくりして、一瞬指が留まった。

ーー花恋先生!?

いや、でも、「かれん」って名前の人結構いるし、、

と考えながらプロフィール画面に移動した。

そしたら、

写真と、アカウント名の下に、高橋花恋とあった。

名前も先生そのものだった。

鍵はかかっていない。  

投稿は少ないけど、楽譜の一部を写した写真や、コーヒーのカップ、映画のチケットの画像が並んでいた。

「……映画、ほんとに好きなんだ」  

結来は小さくつぶやいた。

心華が横からのぞき込む。  

「え、先生のアカウント?」  

「うん。たぶん。なんか、見つけちゃった」  

「うわ、見てるじゃん。気になってるじゃん」  

「だあーかーら!違うって」  

結来は慌ててスマホを伏せる。  

でも、心の中では否定しきれなかった。

恋ではないけれど、気になっているのは、本当かもしれない。

先生は、大人の理想像って感じだった。