翡翠の一輪花


五人で長い廊下を進む。


『それにしても翡翠、美人になったね〜』


「えっ……!?」


『そうだな。昔もかわいかったけど、さらにかわいくなった。ま、今はかわいいというより美しいって感じだけどな~|』


『翡翠よりかわいい女なんてこの世にいないよ』


「えぇ…?」


さすがにそれは言い過ぎじゃない……?


私よりかわいい子なんてこの世に数えきれないほどいるし……


みんないったい私のことがどう見えてるの……?


『葵、顔怖いよ〜』


『『うわ』』


なぜかひきつった顔をしている紺たち。


葵の顔を見ようと、横へ顔を向けようとすると……


『見んな』


葵の大きな手によって阻止された。


「なんで?」


そんなことされたら余計に気になっちゃうよ………


『なんでもないから気にすんな』


「………?」









『あ、着いたね』


紺の声で我に返って前を見ると、いつの間にか目の前に宴会場があった。


『お前ら、待たせたね』


紺を先頭に、部屋に入っていく私たち。


ザワッ


『え、若……?』


『若が宴会に出るなんて……』


『めずらしい……』


え、葵が宴会に来るのがめずらしい……?


ちらっと横を見ると、気まずそうに視線を逸らす葵。


「葵、宴会にはちゃんと出なよ。じゃないと、………」









『葵さまっ』


小走りで駆け寄って来て、ぎゅっと葵の腕に抱きついた花梨。


え………?


『きゃっ』


思わず固まる私を見た紺たちは「あっ」という顔をして、あわてて葵と花梨を引き離した。


『ごめん、翡翠………』


「…………」


『……花梨ちゃんも。いきなり抱きついたら葵が困っちゃうよ』


『はーい………』


な、んで………?


『………』


なにも言葉を発さない葵。


ねぇ、どうして………?


前は葵のことなら考えてることくらいわかってたはずなのに、


今は葵が何を考えているのか、何を思っているのかまったくわからない。


……もしかしたら、


私にだけ向ける、あの優しい顔を花梨にも向けているのかもしれない。


……………そう、思うと怖くて葵の顔が見れない。


っ、やだ………


葵は、私のだ。


他の人なんかに、わたさない。


「葵、行こ」


『っ、翡翠?』


なるべく顔を見ないようにして、葵の腕をぐいっと引っ張った。