翡翠の一輪花


手を引かれてやってきたのは、さっきより少しせまい和室。


きっとここって葵の部屋、だよね。


なんだか見覚えがあるもん。


久しぶりに入ったなぁ………


目の前の葵はすっかり大人になって、前よりさらにイケメンになった。


醸し出す雰囲気も"若頭"っていう感じで_


ほんと、カッコよくなったなぁ………


こんな醜い私とは正反対。


私が闇だとしたら葵は光、かな………


私みたいなどうしようもない人間を救ってくれる正義の光。


前より、ずいぶん差が開いちゃったなぁ……


葵は成長しているのに私はいつまでたっても”あの日”のまま。


…………なにもかわっていない。









『翡翠?』


「……ううん、なんでもないよ」


危うく思考がマイナスになっちゃうところだった………


私はまた葵に会えただけで幸せ者なんだから、そんなこと考えちゃダメだ。


ちゃんと前を向かないと。


それで、……………


『翡翠、こっち向け』


彼の隣に立てるような人に、なるんだ_


「どうしたの?」


『これ、やる』


「………ピアス?」


『……………俺もつけてる』


視線を上げると、たしかに葵の右耳でキラリと光るピアス。


「おそろい?」


『ああ。なにか翡翠とお揃いのモノが欲しかったんだ。………これなら俺は翡翠を忘れないし、翡翠も俺を忘れない』


”いつだって一緒だ”


そう言ってふわりと笑みを浮かべた葵。


ドキッ


「っ///………そ、そういえばこれって翡翠でできてるの?」


動揺を誤魔化すためにあわてて話題を変える。


『………一目惚れ、したんだ』


「ひっ、一目惚れ!?」


『ああ。見つけた時、”翡翠に渡すのはこれしかない”って思ってな』


「そ、そうなんだ……」


一目惚れってそっちか………


びっくりしたぁ……


一瞬告白されたのかと思っちゃった………


「って、ありえないか」


『ん?なんか言ったか?』


「なっ、なんでもないよ……!」


『そうか?そういえば翡翠、………』












ガチャ


『翡翠、葵〜』


「星夜と冬夜?二人ともどうしたの……?」


『今から宴会だ!早く来いよ!』


『みんなもう待ってる』


『…………』


「わ、わかった…!今行くね!」


そういえば、さっき葵がなにか言いかけたような…


まあ大事なことだったらもう一度言ってくれるよね?