翡翠の一輪花

花梨、か………


かわいくて、美人な彼女にピッタリの名前だよね。


また後でちゃんと話せるといいな……


_気になることもいろいろあるし。


『あ、そうだ翡翠。葵が帰ってくる前に組長に挨拶してきたら?』


『そうだな。組長、翡翠に会いたがってたぜ』


『姐さんもね』


「そっかぁ……じゃあ、ちょっと挨拶してくる」


『いってらっしゃい』


『組長室の場所わかるよな?』


「もちろん」









騒がしい部屋を出て、再び長い長い廊下を進む。


たしか、


ここだったよね…?


そっと襖を開ける。


「失礼します」


『………入れ』


深く、ドスの効いた声があたりに響く。


「……お久しぶりです」


『…………お前、もしかして翠か…?』


驚愕の表情を浮かべ、私のことをジッと観察しはじめた組長。


「はい、東雲翠です。」


私がそう答えた次の瞬間、


『おお!!久しぶりだなぁ!!』


思わず威厳のある組長とは考えられないほど無邪気な笑顔になってしまった組長。


これじゃあただの優しそうなおじいちゃんだ………


『あなた、頬がゆるんでるわよ』


そんな組長を注意したのは、組長の奥さんである愛美さん。


組員たちからは"姐さん"って呼ばれている。


「愛美さんも、お久しぶりです」


『翠ちゃん!!会いたかったわよ〜』


ギュッ


とたん、私は愛美さんに抱きつかれた。


「く、くるし………」


『あら、ごめんなさいね……』


さすが組長の奥さん………


力も強い…………


『それにしても翠ちゃん、さらに美しくなったわね〜』


「……!?………そ、そんなことないです」


『謙遜しなくていいのよ?』


「いえ、本当に………」


『きっと葵も会ったら驚くわ~』


「………そうだと嬉しいです」


『そうだ、ひとつ翠ちゃんに伝えないといけないことが………あのね、』


スパンッ


『翡翠!!』


『『「!?」』』


次の瞬間、勢いよく開け放たれた襖によって愛美さんの声が遮られた。