中に入るとふわっと香った木造建築特有のヒノキの香り。


この香りをかぐと、帰って来たんだなぁ…


って実感する。


長い長い廊下を進んで、角を曲がると


馴染みのある大きな和室の前に着いた。


扉を開けると…


『『『『『ご苦労様です!!』』』』』


ぴったりとそろった声が私たちを迎え入れた。


部屋の中には五十人あまりの図体が大きくてガラの悪い男たちの姿が。


普通の人だったらこれを見たら怯えちゃうんだろうけど、私はなれてるから怯えはしない。


『紺サン、彼女は…?』


恐る恐る訪ねてくる、おそらくここにいる人たちのなかでは一番偉い立場にいるであろう男。


『みんなわからないの?』


『わかりませんよ』


『絶対知ってると思うんだけどな〜それがなくても名前だけ聞いたことがあるって人もいるかも』


『えぇ?』


頭をフル回転させて答えを導き出そうとしている彼ら。


『彼女はね、翡翠っていうんだよ』


『『『『『…』』』』』


とたん、あたりが静寂につつまれた。


そして


次の瞬間…


『『『『『えぇぇぇぇぇ!?』』』』』


一気に部屋の中に彼らの叫び声が反響した。


『翡翠サン!?』


『マジで!?』


『ウソだろ!?』


『翡翠ってあのウワサの…?』


『おれ、初めて会った…』


それぞれ好き勝手に話し出す男たち。


『おい、うるせぇぞ!!』


それは、冬夜のドスの効いた一言によりおさまった。


『おまえら、挨拶しろ!』


『『『『『へい!』』』』』


『『『『『翡翠サン、こんにちは!!』』』』』


「こんにちは」


あわててニコッとほほえんで挨拶を返す。