翡翠の一輪花


葵と晴れて両思いになった翌日_


「ん……」


『起きたか?』


となりから葵の声がする………


こんなところに葵がいるはずないのに………


私、夢をみてるのかな………


ぼんやりとする視界の中でだんだんとハッキリしていく記憶。


「えっ……!?」


ありえないはずの現実にあわてて目を開ける。


すると、私はなぜか葵に抱きしめられていて。


目の前には葵のドアップ。


『翡翠、好きだ』


チュッ


リップ音をたてて頬にキスをしてきた葵。


「っ///」


『かわいい』


「急になにっ?///」


『ん?別にただ言いたくなっただけ』


ニッコリと殺人級の笑顔を浮かべた葵。


『っ///』


『ははっ……翡翠は?俺のこと、好き?』


「………好き………っん」


次の瞬間、深く重なった唇。









「あ、そういえば昨日の会合ってなにを発表したの?」


『ん?若頭になったってことと、翡翠が俺の本当の婚約者だってこと。』


「そうだったの…?てっきり私、葵は花梨と結婚するんだと思ってて………」


『はあ!?そんなこと死んでもありえねぇ!!』


必死の形相で否定する葵にちょっとホッとする。


「あれ、……そういえば花梨は?昨日から姿見ないけど……」


『………あいつは、昨日出て行ったぞ』


「えっ」


『なんだ?不満なのか?』


「いや、ちょっと驚いただけ………そこまで仲がいいわけじゃないけど、一応友達(?)だったんだよなぁ……」


『翡翠の友達なら俺たちがいるだろ?』


「う〜ん……葵たちはこう、なんていうか……仲間、みたいな…?正確には幼なじみだけど」


『で、俺は翡翠の許嫁だろ?』


「う、ん///」


”許嫁”


将来を約束した相手。


まだ全然実感がわかないけど………


葵の口から紡がれたその言葉にドキッと心臓が跳ねる。


『…………翡翠が言うんなら今からでも連れ戻すがどうする?』


「ううん、いいや。だって………」


『ん?』


「その、私たちがすれ違っちゃった元凶は花梨だったりするから………」


『………そうだな』


さっきよりもワントーン下がった私の前では滅多に出さない低い声。


声にはしてないけど、きっと頭の中ではいやな思い出がグルグルとしているんだろう。


その証拠に、葵の眉間にしわが寄ってる………


「…………そんな顔しないでよ。私たちが結ばれたのは花梨のおかげなんだし」


そっと、自ら葵と唇を重ねる。


『っ///』


ドサッ


「!」


『そんなかわいいことすんな。……じゃないと、襲っちまうぞ?』


「ダ、メ……だよ………」


葵の、熱を孕んだ漆黒の瞳が私をとらえる。


『それ、逆効果だから』


「っ………でも………」


沈黙の末、


『…………しょうがねーな。今はキスだけで我慢してやるよ』


”今は、な”


と、付け加えて強引に私のくちびるを奪った…………私の、最愛の人_









”幸せ”


私みたいな人間から一番遠い言葉。


私自身そんなことはよくわかっていて、今まで自分から無意識に”幸せ”から逃げていた。


だけど_


そんな私を、葵が変えたんだ。


闇しか知らなかった私を救ってくれた葵。









”大好き”


”愛してる”









これからも、


永遠にこの幸せが続きますように_


〜end〜