母の残してくれた貯金には手を付けられなかったが、由里のウエデイングドレスはこの母の残したお金で作る事を、母は希望していたのだ。

だから母が作ってくれたドレスでリアムに嫁くことにしたのだ。

そんなドレスの話や結婚式の話を何度も母と楽しくしていた。

由里はウエデイングドレスとパーテイ―ドレスとリアムのタキシードを、母のお金で作って貰った。

リアムも喜んでくれた。

そしてリアムはウエデイングパーテイを日本式に新郎新婦がひな壇に座り出席者が円卓を囲むというスタイルで、お色直しも1回行うといった。

由里は少し引いたけれどリアムの

「お母さんに見せてあげなくちゃね」

という言葉に納得してしまった。

日本のゴールデンウイークの前4月の末に、カサブランカ東京が無事にオープンした。

今度は6月末の結婚式に向けて由里は怒涛の日々を過ごすことになった。

でもウエデイングドレスとパーテイドレスとリアムのタキシードは手を抜かなかった。

母が作ってくれるドレスだ。

ウエデイングドレスはアイボリーの光沢のある絹製のタフタを使ってワンショルダーのマーメードラインのシンプルなデザインにしてショルダー部分に少し華やかなレースをデザインしてもらった。

ウエストからパニエのように膨らみを少し持たせてレースを重ね付けして長くトレーンを引く華やかなデザインになっている。

細身で背が高く出るところの出た由里にそのドレスはとても似合っていた。

ウエスト部分のレースを取り外すとすっきりとしたパーテイドレスになる。

せっかくの母が作ってくれるドレスを1回着て終わりにしたくなかった。

いろいろな飾りをつけることで全く違う印象のパーテイドレスになる。アイボリーにしたのもそのためだ。

ウエデイングドレスのアイボリーはとても好評で、由里は大満足だった。

リアムは何を着ても最高に素敵だった。

リアムも特注でデザインしてもらい結局渋いグレーのフロックコートスタイルに薄い光沢のあるベストとタイと真っ白のシャツを合わせた。

背の高いリアムにフロックコートはかっこよくていつも見とれてしまう。

そして、由里はお色直しに白無垢の打掛を着た。

打掛には襟元や裾廻りにリアムの瞳の色に合わせてブルーを入れた。白にブルーが映えて美しい着物スタイルになった。

リアムは紋付き袴の和装で紋付きと着物はブルーで袴は縦じまの濃紺にした。

そして紋を入れるところにはカサブランカの刺繡を入れた。

由里の打掛の背中にも、すこしブルーが入った刺繍糸で大きなカサブランカの刺繍を入れてもらった。

日本のスタイルにはない白無垢の打掛になった。

2ケ月をかけてギリギリのタイミングで仕上がってきた。

この和装はカサブランカ東京の婚礼部門で貸し出される予定だ。

リアムと由里の写真とともに婚礼衣装のレンタル部門に、飾られることになる。