あまりもう手に力が入らないのだろう。リアムはキャップも取ってあげていた。本当に優しい人なのだ。
水を飲んで一息つくとまた話し始めた。
「もう頭はいっぱいいっぱいで何を考えてもいい案は浮かばなかった。私が捕まればゆりは一人になってしまう。結局警察になんて話をすればゆりを守れるかもわからず、頼れる親も兄弟も親戚もいなかったから…実は私も養護施設で育ったのよ。だから案外世間の皆が思うほど悪い環境ではないと分かっていたから、ゆりが目を覚まして何も覚えてないことに気づいたとき養護施設に引き取ってもらえるようにしようと思ったの。東京の事はわからなかったけどキリスト教の養護施設ならちゃんと面倒を見てもらえる気がして朝になっていろんな区役所に電話をして聖ミカエル養護施設を探し当てたの。そしてゆりには名前と年はもうすぐ8歳ということだけ覚えさせて、その次の日の朝早くに施設のそばの路上にゆりを置き去りにして施設に電話をして、女の子が一人で歩いていると伝えたの。きっとその施設で保護してもらえると思って神様に祈ったわ。私の宝物をどうか無事に生きていけるようにお守りくださいと、神様は願いを聞いてくださったようで、その施設でゆりはすくすくと明るく元気に育っていった」
そこでまた、息が荒くなる。
「お母さん大丈夫?明日また来るから、今日はここまでにしよう」
「いいえ大丈夫。話をさせて欲しい」
そう言って、少し休憩するとまた話し始めた。
「悪夢に悩まされているなんてその時は知らなくて悪い母親ね。本当にごめんなさい。私はゆりが保護されるのを見届けて福島にすぐに帰ったの。そうしたら、その前の日一帯で家事があって、家は全焼していたの。近所の6世帯が焼けた大きな火事だったらしくて5人が亡くなった。あの男もそのうちの一人だったんだけど、検視もできないくらいに焼けていたらしい。その上あの男は結婚届も私達の転入届も出していなかったのよ。だから、私たちはそこに住んでいないことになっていたの。近所も焼けてしまって私達のことに気づく人はいなかった。一番よく話していた隣のおばあさんも亡くなってしまったから。看護師の登録は前の住所のままで働いていたから病院にはすぐに電話してやめさせてもらってゆりを迎えに行こうとまたそのまま車に乗って東京に向かったの。でも、2日も寝ていなくて居眠り運転でガードレールにぶつかって崖下に車ごと落ちてしまって気づいたら病院にいたの。でも頭を強く打ったらしくて何も覚えていなかったの。とりあえず大事なものはバックの中に入っていたので名前だけはわかったけど。貯金も少しあったから1ケ月入院して、退院してからはその近くでアパートを借りて小さな病院で看護師として働いたわ。看護師の仕事は忘れてなかった。休みの日には宮城の住所に行ってみたりしたけど何も思い出せなかった。でも1冊の写真帳は手元にあって結婚して子供がいて旦那さんもいたことはわかった。子供はどうしたのか自分はなぜこんな所にいるのか何も思い出せずに3年がたったころ病院で若いお母さんが、5歳くらいの女の子を診察に連れてきていて、その女の子を“ゆり“って呼んだの。それで走馬灯のように過去が頭の中に戻ってきたの。私は病院ですぐにお休みを3日もらってゆりを預けた養護施設に行こうと思ったのだけど、場所が全然わからなかったの。名前もうろ覚えで何区かさえ思い出せなくてキリスト教会の養護施設を休みのたびに探し歩いてやっと見つけたけど、なんて言えばいいのか結局人を殺してしまったのにゆりの母親とは名乗れなくて遠くからゆりの姿を探すだけしかできなかった。ゆりはもう6年生になろうとしていた。本当はまだ今度5年生のはずなのにきっと1歳年上に思われたんだろうと思った。今度8歳が今8歳に…」
そこまで話して母は疲れたのだろうまたお水が欲しいと言ってちょっと休憩ねと笑った。
水を飲んで一息つくとまた話し始めた。
「もう頭はいっぱいいっぱいで何を考えてもいい案は浮かばなかった。私が捕まればゆりは一人になってしまう。結局警察になんて話をすればゆりを守れるかもわからず、頼れる親も兄弟も親戚もいなかったから…実は私も養護施設で育ったのよ。だから案外世間の皆が思うほど悪い環境ではないと分かっていたから、ゆりが目を覚まして何も覚えてないことに気づいたとき養護施設に引き取ってもらえるようにしようと思ったの。東京の事はわからなかったけどキリスト教の養護施設ならちゃんと面倒を見てもらえる気がして朝になっていろんな区役所に電話をして聖ミカエル養護施設を探し当てたの。そしてゆりには名前と年はもうすぐ8歳ということだけ覚えさせて、その次の日の朝早くに施設のそばの路上にゆりを置き去りにして施設に電話をして、女の子が一人で歩いていると伝えたの。きっとその施設で保護してもらえると思って神様に祈ったわ。私の宝物をどうか無事に生きていけるようにお守りくださいと、神様は願いを聞いてくださったようで、その施設でゆりはすくすくと明るく元気に育っていった」
そこでまた、息が荒くなる。
「お母さん大丈夫?明日また来るから、今日はここまでにしよう」
「いいえ大丈夫。話をさせて欲しい」
そう言って、少し休憩するとまた話し始めた。
「悪夢に悩まされているなんてその時は知らなくて悪い母親ね。本当にごめんなさい。私はゆりが保護されるのを見届けて福島にすぐに帰ったの。そうしたら、その前の日一帯で家事があって、家は全焼していたの。近所の6世帯が焼けた大きな火事だったらしくて5人が亡くなった。あの男もそのうちの一人だったんだけど、検視もできないくらいに焼けていたらしい。その上あの男は結婚届も私達の転入届も出していなかったのよ。だから、私たちはそこに住んでいないことになっていたの。近所も焼けてしまって私達のことに気づく人はいなかった。一番よく話していた隣のおばあさんも亡くなってしまったから。看護師の登録は前の住所のままで働いていたから病院にはすぐに電話してやめさせてもらってゆりを迎えに行こうとまたそのまま車に乗って東京に向かったの。でも、2日も寝ていなくて居眠り運転でガードレールにぶつかって崖下に車ごと落ちてしまって気づいたら病院にいたの。でも頭を強く打ったらしくて何も覚えていなかったの。とりあえず大事なものはバックの中に入っていたので名前だけはわかったけど。貯金も少しあったから1ケ月入院して、退院してからはその近くでアパートを借りて小さな病院で看護師として働いたわ。看護師の仕事は忘れてなかった。休みの日には宮城の住所に行ってみたりしたけど何も思い出せなかった。でも1冊の写真帳は手元にあって結婚して子供がいて旦那さんもいたことはわかった。子供はどうしたのか自分はなぜこんな所にいるのか何も思い出せずに3年がたったころ病院で若いお母さんが、5歳くらいの女の子を診察に連れてきていて、その女の子を“ゆり“って呼んだの。それで走馬灯のように過去が頭の中に戻ってきたの。私は病院ですぐにお休みを3日もらってゆりを預けた養護施設に行こうと思ったのだけど、場所が全然わからなかったの。名前もうろ覚えで何区かさえ思い出せなくてキリスト教会の養護施設を休みのたびに探し歩いてやっと見つけたけど、なんて言えばいいのか結局人を殺してしまったのにゆりの母親とは名乗れなくて遠くからゆりの姿を探すだけしかできなかった。ゆりはもう6年生になろうとしていた。本当はまだ今度5年生のはずなのにきっと1歳年上に思われたんだろうと思った。今度8歳が今8歳に…」
そこまで話して母は疲れたのだろうまたお水が欲しいと言ってちょっと休憩ねと笑った。



