5冊になる写真帳を由里は泣きながらめくっていた。
「お母さん」
思わず由里はそう呼んでいた。
「ゆり、お母さんと呼んでくれるの?ありがとう。うれしい」
と言って母も涙をぬぐった。
「あなたの名前はね。向井百合っていうの。百合の花のゆりよ。私の名前の一文字を取ったの。真っ白な百合の花のように純真で優しい女の子になるようにという意味を込めて、お父さんが名付けてくれたの。あなたのお父さんは漁師でね。宮城県の石巻市の漁港の近くにあなたが5歳の時まで3人で暮していたの。私は看護師だったけど由里が生まれてからは看護師もやめたわ。あなたが5歳の時にお父さんは嵐の海で船が転覆して亡くなったのよ。その後また看護師として働きだしたの。そこで患者だった男と再婚したのよ。あなたが7歳の時だった。それがすべての間違いの元だった。あなたの人生も狂わせてしまったし母娘も引き裂かれてしまった。私がすべての原因なの。本当にごめんなさい」
「お母さん何があったの?」
と由里は母の骨ばかりになった背中を優しくなでた。
「ゆりは子供の時からそうだったけどほんとに優しい子。ゆりは1年だけ石巻の近くの小学校に通ったんだけど、再婚した男が福島に家があるからそっちに引っ越しをしようと言ったので、3人で福島の会津若松市に引っ越したの。そこで看護師の仕事を見つけて私は一足先に働きだしたの総合病院だったから夜勤もあったのだけど、夜は俺がいるから大丈夫と言って自分は5時には家に帰れるような仕事を見つけると言っていたの。でもなかなか見つからなくて、ホントに探していたかは今になってはわからないけどゆりの転校の手続きも任せていたのになかなかしてくれなくて、でもゆりはパパと言って最初のころはとてもなついていたの。でもだんだんゆりの様子がおかしくなってきて、あまりしゃべらないし笑わなくなってきておかしいなと思いながらも仕事が忙しくて疲れはててしまっていたから、あまりかまってやれなくて。そんなある日夜勤だったんだけどちょっと熱が出てきたから夜中に早退させてもらったの。家に入るとゆりがパパやめて痛い痛いと言って泣いているのが聞こえて居間に行ってみるとあの男がゆりに覆いかぶさっていて下半身を裸のゆりに…もう頭に血が上ってしまって手に持っていたバックで頭を殴りつけて引きはがしたの。その時柱の角で頭を打ってしまってすごい血が出たの。ゆりはそれを見てパニックを起こして気を失ってしまったわ。私は急いでゆりに服を着せて車に飛び乗ってとにかく遠くに行かなければとしか思ってなかった。途中で休憩したときに少し考えて東京に行こうと思ったの。隠れるなら人の多い東京がいいと思った。でも、私はあの男を殺してしまってゆりを人殺しの娘にさせるわけにはいかないと気付いた」
そこまで話して、お水が欲しいと言った母に冷蔵庫からペットボトルを出してリアムが手渡してくれた。
「お母さん」
思わず由里はそう呼んでいた。
「ゆり、お母さんと呼んでくれるの?ありがとう。うれしい」
と言って母も涙をぬぐった。
「あなたの名前はね。向井百合っていうの。百合の花のゆりよ。私の名前の一文字を取ったの。真っ白な百合の花のように純真で優しい女の子になるようにという意味を込めて、お父さんが名付けてくれたの。あなたのお父さんは漁師でね。宮城県の石巻市の漁港の近くにあなたが5歳の時まで3人で暮していたの。私は看護師だったけど由里が生まれてからは看護師もやめたわ。あなたが5歳の時にお父さんは嵐の海で船が転覆して亡くなったのよ。その後また看護師として働きだしたの。そこで患者だった男と再婚したのよ。あなたが7歳の時だった。それがすべての間違いの元だった。あなたの人生も狂わせてしまったし母娘も引き裂かれてしまった。私がすべての原因なの。本当にごめんなさい」
「お母さん何があったの?」
と由里は母の骨ばかりになった背中を優しくなでた。
「ゆりは子供の時からそうだったけどほんとに優しい子。ゆりは1年だけ石巻の近くの小学校に通ったんだけど、再婚した男が福島に家があるからそっちに引っ越しをしようと言ったので、3人で福島の会津若松市に引っ越したの。そこで看護師の仕事を見つけて私は一足先に働きだしたの総合病院だったから夜勤もあったのだけど、夜は俺がいるから大丈夫と言って自分は5時には家に帰れるような仕事を見つけると言っていたの。でもなかなか見つからなくて、ホントに探していたかは今になってはわからないけどゆりの転校の手続きも任せていたのになかなかしてくれなくて、でもゆりはパパと言って最初のころはとてもなついていたの。でもだんだんゆりの様子がおかしくなってきて、あまりしゃべらないし笑わなくなってきておかしいなと思いながらも仕事が忙しくて疲れはててしまっていたから、あまりかまってやれなくて。そんなある日夜勤だったんだけどちょっと熱が出てきたから夜中に早退させてもらったの。家に入るとゆりがパパやめて痛い痛いと言って泣いているのが聞こえて居間に行ってみるとあの男がゆりに覆いかぶさっていて下半身を裸のゆりに…もう頭に血が上ってしまって手に持っていたバックで頭を殴りつけて引きはがしたの。その時柱の角で頭を打ってしまってすごい血が出たの。ゆりはそれを見てパニックを起こして気を失ってしまったわ。私は急いでゆりに服を着せて車に飛び乗ってとにかく遠くに行かなければとしか思ってなかった。途中で休憩したときに少し考えて東京に行こうと思ったの。隠れるなら人の多い東京がいいと思った。でも、私はあの男を殺してしまってゆりを人殺しの娘にさせるわけにはいかないと気付いた」
そこまで話して、お水が欲しいと言った母に冷蔵庫からペットボトルを出してリアムが手渡してくれた。



