病室に入るとその人はベットに横たわっていた。

こちらに顔を向けると由里を見てはっとすると、急いで身を起そうとした。

リアムは慌てて駆け寄ってベッドを操作して、座れるように枕の位置やクッションを背中に当ててやった。

まったく誰の母親なんだかと、由里は内心苦笑しつつベッドに近寄った。

“ゆり”とつぶやくとその人は見る間に目に涙をいっぱい溜めて、でも泣くまいと我慢しているようだった。由里は

「こんにちは。突然訪ねてきてごめんなさい」

「そんな事、今更会えるなんて思っていなかったから、こんな見苦しい格好でこちらこそごめんなさい」

と悲しそうにほほ笑んだ。ちょっと由里に似てる。

「向井百々子と申します。リアムさんがとてもよくしてくださって、由里さんにきちんと話をするべきだと何度もここにきて説得してくださったの。由里さんが嫌でなければ話を聞いてもらえますか?」

とか細い声で由里に尋ねた。

「由里その前にこれを見て、僕はこれをもらうことになってるんだ。宝物だよ」

とリアムは数冊のアルバムを見せてくれた。

そこには生まれたときの由里から6歳くらいまでの由里の写真。

父親と思しき人に抱かれている小さな女の子、親子3人の写真もあった。

そのあとは小学校に通うランドセルを背負った由里。

もう6年生位だろうかランドセルが小さく見える。

養護施設の庭でみんなと遊ぶ由里の傍らで笑っている裕司もいた。

運動会で走る由里、そのあと転んでべそをかきながらゴールする由里、小学校の卒業式、中学校で骨折して松葉杖を突いて笹森を従えて歩く由里、中学校の卒業式、高校の入学式、文化祭、体育祭の応援で赤い鉢巻を凛々しく巻いて大きく口を開けている由里。
大学の入学式で新入生代表として挨拶をする姿、カフェでバイトする由里はお客様に明るい笑顔を向けている。

大学の卒業式で総代を務めスピーチする由里。

すべて日付ごとにきちんと分けてその下にはコメントが書かれている。