リアムは由里にはホテルの内装やプランニングを頼むのだから、また東京に来る機会は何度もあるよと言って笑っていた。

そうか、あの要請はまだ有効らしいので、頑張らなければと思う由里だ。

今はYSプランニングの仕事もないので、ホテルのことに集中できる。

ちょっと楽しみになってきた。

リアムと相談して結婚式は東京のホテルのオープンが済み落ち着いたころ来年の6月に決めた。

まだ、半年位時間がある。

ゆっくりと式の準備ができるだろう。

リアムはジューンブライドにこだわった。

由里はどっちでもよかったが時期的にもいいころだ。

日本と違って梅雨はないので雨の心配も少ない。

日にちが決まったとたんリアムはケンに連絡してマンハッタンの中心部にある歴史的な教会に、予約を入れることを指示した。

とにかく行動が素早い。

東京を発つのは名残惜しいし結局笹森には会えずじまいだ。

ラインで色々話してお礼の言葉もたくさん伝えた。

ほんとに彼がいてくれたおかげで辛い日々を乗り切れたのだ。

笹森にも結婚式に来てくれるかと尋ねたが、トップの二人が同時に何日も会社を開けられないと言って断られた。

その代わり由里のウエデイングドレス姿の写真を撮って送ってほしいと言った。

ただし一人で写したものという注釈がついていた。

慌ただしく残りの日々を過ごして二人でニューヨークに戻った。

もちろんプライベートジェットだ。

ニューヨークに着くとケンにマット、ミッシェル、真理子までが出迎えに来てくれていた。

ミッシェルと真理子は由里の顔を見ると泣きだした。3人で抱き合って由里は何度も

「ごめんね。ごめんね」

と謝った。

とにかくその日はペントハウスに帰った。

二人とは別の日に会うことを約束させられた。

ペントハウスに着くと懐かしさで胸がいっぱいになった。

テラスも、由里が打ち合わせした通りに完成していた。

とても居心地のよさそうなテラスに由里はうれしくなった。

リアムはここに由里がいるのといないのでは、全く雰囲気が違うと言って感激していた。

由里がいないこの場所に帰ってくるのがとても辛かったと言って、もう二度とあんな思いはしたくないと言った。

由里は自分も長くトンネルの中にいるような苦しい日々を過ごしていたのだが、リアムも同じように辛かったのだと理解した。