真夜中の償い

次の日ダブリンへ向かうプライベートジェットの中で由里はそんな不安をリアムに打ち明けた。

「由里はどうしても働きたいの?子供ができても?」

「子供?」

「そうだよ結婚したら子供ほしくないの?」

「結婚?」

「僕は由里と結婚したい。というよりも結婚しているつもりだったんだ。ペントハウスで暮らし始めたときからそのつもりだった」

「そんなこと初めて聞いた」

「ごめん僕が勝手に思っていたんだ。ちゃんとプロポーズもしてなくて今回由里が出て行ってしまって、何も僕たちの間には目に見える確かなものがなかったと気づいた。だから結婚しよう。結婚してください。ずっと僕の側に居て欲しい。愛しているんだ。由里だけしか愛せない。これから先死ぬまで僕には由里だけなんだ」

由里はびっくりして何も言えなかった。

ただ涙があふれるばかりで何も言葉が出てこない。

「由里結婚してくれるよね?仕事は由里がしたいならすればいいよ。焦らずにゆっくり考えればいいんだ」

由里はただコクコクと頷くことしかできなかった。

リアムはそっと由里を抱きしめて優しくキスをした。

「グランパとグランマが大喜びするよ。ほんとはダブリンでちゃんとプロポーズするつもりだったんだ」

そう言って手荷物から小さな箱を取り出した。

中からすごい輝きのある指輪を取り出して由里の左手の薬指にはめてくれた。

プラチナのリングの真ん中に一粒の大きなダイヤが目を引くそれを取り囲むようにメレダイヤが二重にぐるっと回っている。

見たこともないようなゴージャスな指輪だ。

由里は泣きながらそのダイヤの指輪を見つめていた。

「由里なんか言ってよ。心配になるじゃないか」

由里は大きな目に涙をいっぱい溜めて

「ありがとう、うれしい」

と小さな声を絞り出した。

この婚約指輪は由里を見つけたら、すぐにプロポーズするつもりで買ってあったものでリアムは由里に否は言わせるつもりはなかったと言って笑っている。

「良かった。安心した。断られるかと思った。結婚指輪は一緒に見に行こうね。ニューヨークに帰ったらすぐに買いに行こう」

プライベートジェットの中でも、リアムは由里の側を離れようとしなかった。

ずっと手を繋いだり、食事が出れば甲斐甲斐しく世話を焼いて食べさせようとする始末だ。

一人で食べられると言っても聞かず、嬉しそうに由里の世話を焼くリアムだった。

ダブリンのグランパとグランマの家に着くと二人に大歓迎された。

そして由里の左手の指輪に気づいたグランマは

「まあ、リアム!今までの33年間の人生で最高のクリーンヒットよ!」

と言って二人を抱きしめた。グランパは

「なんだそれは」

と言って四人で大笑いした。