心臓がバクバクして顔を上げられない。

心の中では⦅嘘よ幻聴よ、あまりにリアムに会いたくて耳までおかしくなったのだわきっと。こんなところにリアムがいるわけない⦆そう思い込んで一歩足を進めると、腕をつかまれて振り向かされる。

「由里、会いたかった。寂しくて寂しくてどうにかなりそうだった。やっと見つけた。もう逃がさないよ」

そう言ってリアムは由里をしっかりとその腕の中に閉じ込めた。

「リアム?」

「そうだ話すことが山のようにあるけれど今はとにかく由里を抱きしめていたい」

「でもリアムここは道路の真ん中で人もいっぱいいるしその…」

と続ける間もなく由里の言葉はリアムの唇で塞がれた。

何度も何度も食むようにキスをして由里を離さない。

周りからはヒューヒューという揶揄いの口笛が聞こえ、我に返った由里がリアムを制する。

「もうやめて。ここは日本でニューヨークじゃないのよ。いい加減にして」

「じゃあどこか静かに話せるところに行こう」

そういって由里を引っ張っていこうとするリアム。

「ちょっと待って、今日友人と夕食の約束しているのだから今からなんて無理よ」

「じゃあ僕も同席させて女性?男性?」

「男性よ」

由里が言ったとたんにリアムの顔が険しくなる。ワントーン低い声で

「誰その人、由里とどういう関係なんだ?なぜ夕食を一緒に食べるの?僕より大切な人?いつの間にそんな男ができたの?」

矢継ぎ早にまくしたてるリアムに閉口して由里は

「ちょっと待って、どういうことって聞きたいのはこっちなんだけど。どうしてリアムがこんなところにいるの?会いたかったって何?リリアさんとの結婚は?新婚旅行に来てるの?リリアさんはどこ?こんな所見られたらまずいでしょう?」

由里も矢継ぎ早に質問で返す。

「由里は誤解してる。リリアと結婚なんかしない。僕が愛しているのは由里だけだよ。わかってよ。ちゃんと説明するから」

リアムは必死だった由里にぴったりくっついて離れようとしない。

「由里」

今度は笹森だ。