きっと会えるそんな気がしている。

由里はリアムの運命の人で、リアムの片割れなのだ。

アイルランドにはそういう言い伝えがある運命の二人ならば、たとえ離ればなれになっても強く求め続ければ、きっと再会できるのだと言われている。

グランマがそう言ってリアムを励ましてくれた。

リアムとリリアの記事がマスコミに流れたとき、これはミスターゴバートの差し金だったのだが、ニューヨークに友人がいるグランマにはリアムのゴシップが出ると速攻で伝わってしまうのだ。

あの時もグランマが電話してきてすっかり参ってしまっていたリアムに、そう言って励ましてくれたのだ。

きっと叱り飛ばすつもりだったのだろうが、余りにもリアムが気落ちしていて叱るに叱れなかったのだ。

元来優しいグランマなのだから…

とりあえず明日から2週間クリスマスまでに、何としてでも由里を見つけるという強い気持ちで、リアムは東京に向けて旅立った。 

由里は外資系の貿易会社に的を絞って就活をしていた。

笹森もいろんな情報をくれたが横浜にオフィスがあるというのも条件の一つで、なかなかそんなに都合よく求人が出ていない。

でも、東京はRKOのホテルが来年の春にはオープンするので、万が一にも遭遇する機会があるかもしれない為候補から外したのだ。

横浜で見つからなければ神戸や大阪、名古屋でも構わないと思っている。

英語フランス語中国語が話せるし読み書きもできる。

そんな語学力を活かした仕事が希望だ。

不動産関係やホテル業はリアムと遭遇することも考えてNGだ。

笹森はどれだけ避けるのと笑っていたが由里は真剣だった。

2度と会ってはいけない人だ。

もし会ってしまえば今はまだ平静を保っていられる自信がない。

そんな由里に笹森がいい情報を持ってきた。

主にヨーロッパとの貿易に特化している会社が、役員秘書を募集しているらしいということだ。

その会社では日本であれ社内は英語が通常で、フランス語ドイツ語イタリア語のどれか一つでも話せれば待遇が良いらしい。

由里は飛びついた笹森に詳しく話を聞くために、今日は中華街で夕食をする約束になっている。

まだ由里はウイークリーマンションに住んでいる。

好きな料理もこの頃ではやる気が出てきて、毎食きちんと作って食べている。

だからたまの外食は気分転換にもなってうれしい由里だった。

約束の時間は7時だけれど中華の食材を買い込むつもりで、早めに出て中華街をぶらぶらしようと思っている。

この頃はそんな余裕も出てきた。

干し貝柱や中華の調味料を買ってそろそろ約束の時間になってきたので、お店に向かおうと踵を返したら”由里”という懐かしく愛おしい声が日本人の発音の由里ではなく英語の発音の由里だ。