笹森は中学以来思い続けた由里を今だけは自分一人が支えているという現状に、由里には申し訳ないが浮かれていた。

会社でもこの頃笹森の機嫌がMAXに良くなっていると、周りのスタッフに思われている。

裕司や洋子にも彼女でもできたのかと問われたほどだ。

社畜のように仕事をこなしていたのに、定時で上がる日が週に何回もあり外から直帰するという日まである。

すべて由里に会うためだけどそれは誰にも内緒だ。

リアムの執念はすごいものがある。いずれは由里を見つけ出すだろう。

由里もリアムを愛しているのはわかっている。

でもそれでも笹森は二人が別れる選択をしたなら、なんとしても由里をつかんで離したくなかった。

由里を諦めないでいようと思っている。

いやもう15年以上由里の事を想い続けている。

ちょっと自分でも呆れるくらいだ。

でも笹森にとって由里の幸せが第一なのだ。

ニューヨークにいるよりは、こうして日本にいて時々会える今の距離は何にも代えがたいほどの、安らぎを与えてくれる。

自分からリアムや裕司に由里の居場所を教えるつもりはない。

二人には申し訳ないが、自分のささやかな幸せを壊したくはなかった。

見つけた時の由里はほんとにボロボロだった、やつれて遠い目をしていた。

そっと抱きしめた笹森の胸で、20分以上もわんわん泣いていた。

泣き止んだ由里に、今の顔は笹森が由里と出会って以来最強のブスだと言ったら、目を丸くしてその後ひどいと言いながらも二人で大笑いした。

そして、何か吹っ切れたようにその後の由里は会うたびに、上辺は元気になっていった。

まだまだリアムへの気持ちは吹っ切れていないのは笹森にはお見通しだが、リアムの話は一切しなかった。

今は由里と二人の時間を大切に過ごしたいと思った。

その思い出だけでその後の人生を一人で生きていけると思っている。

本当に自分でも呆れる程、由里への想いを拗らせている。

中学生の時由里に怪我をさせた。

思えばそれは勉強で由里にかなわないから悔しいと言うのではなくて、好きな女の子にちょっかいをかけたかっただけなのだ。

階段で背中を押すなんて酷いことをしたと思っている。

その後由里の怪我が治るまで、由里に付き添い養護施設の手伝いまでした。

裕司にボコられたが、その後は結構仲良くしてくれた。