その頃由里は横浜にいた。新しく仕事を見つけなければいけないと思ってはいた。

会社を整理してもろもろの費用を払っても、1000万以上は残るだろうし由里自身の貯えもかなりある。

ナタリアの示談金がほとんど残っているし、小さな店くらいなら余裕で開店できる。

だから直ぐに働かなくても生活には困らないけれど、毎日ボーとしているとリアムのことばかりを考えてしまう。

今はホテルを引き払いウイークリーマンションに移っているのだが、きちんと住む場所を決めるのは働き先が決まってからと思っている。

自分のことよりミッシェルと真理子の今後のことが心配だ。

由里がニューヨークを出てから約1ケ月、RKOの10周年のパーテイも無事に終わったとミッシェルから聞いている。

彼女はRKOの企画部に就職が決まった。ケンが便宜を図ってくれたのだろう。

真理子のほうはびっくりすることに、ご主人がダウンタウンにイタリアンのお店を出すことになったらしく、その準備でてんてこ舞いしているらしい。

何でも良いパトロンがついたらしい。本当によかった。これで一安心だ。

由里はもう二人は大丈夫だろうと、また新しく携帯の番号を変えた。

さあ、いつまでも潜ってないで自分も動き始めよう。

由里は横浜に住んで横浜の会社に再就職先を探していた。

ここからなら園に行くにも交通の便がいいし、大学時代4年間住んだ街なので土地勘もそれなりにある。

大学とはかなり離れてはいるけど、横浜は好きな街なのだ。

だからこの町に住んで働く事ができればうれしい。

由里は就活の合間に母校の大学に何度か足を延ばしている。

いつも裕司と笹森と3人で待ち合わせたりランチを買ってきて食べたりしていた中庭のベンチが懐かしく、なかなかうまくいかない就活の合間に立ち寄って一人でコンビニのお弁当を食べたりしていた。

ここは穴場なのだが、今でもそれは変わらないみたいだ。

誰にも邪魔されずに一人でゆっくりできる。

時には学食で若い学生たちを人間ウオッチングしながら、学食でランチしたりもしていた。

自分の学生時代を懐かしく思い出しながら、学生たちを見ているのは楽しかった。

あの頃は自分に絶望することもなく、ただ前を向いて未来に夢をはせていたものだ。

こんな心が沈むことなんてなかった。困ったこともあったがいつも裕司と笹森が側にいてくれてそれだけで百人力だったのだ。