手紙の消印は東京になっている。由里は今東京にいるようだ。それしかリアムにはわからなかった。

ケンにさんざん言われてリアムは由里を取り戻すと決意した。

リアムはナタリアのトラブルの時に二度とこんな思いはさせないと、由里に大きな口をたたいていたのにこの有様だ。

その時から由里がリアムにはふさわしくないと、なぜだか思い込んでいたのを知っていたにも拘らず、本当には理解していなかったのだ。

ミスターゴバートはまさにそこをついて、由里を傷つけてリアムから離れる選択をさせてしまったのだ。

誰でもないリアムのせいで由里は傷つきまた裏切られて、捨てられたと思ったはずだ。

由里にとっては何より辛い事だ。

裕司にも言われたことがある。

⦅僕たちは他人の心情にきっと敏感だ。裏切られたり侮られたりしたと感じたならその人とは二度と付き合えない。もう捨てられるのはごめんだからだ。⦆

そんな言葉を思い出した。

考えれば考えるほど由里に許してもらうのは、難しい事だと実感する。

でも、自分のためにこれからの未来のために僕には由里が必要だ。

だから何としてでも由里を見つけて今度こそ離さないと誓おう。

「ケンありがとう。情けないよな。でも目が覚めた泣いて惨めになっている場合じゃない。由里を探し出して絶対僕のもとに連れて帰るよ」

「うん、それでこそリアムだ。目に力が戻ってきたよ。死んだ魚のような目をしていたぞ。この1週間は…」

そういってケンは笑った。

「実はこの手紙をもらってすぐに由里を探すように、いつものところに指示を出してある。ユウ兄にも連絡してみたら?」

「ケンお前がいてくれてよかった。何にも代えがたい親友だ。ほんとに助かった。やっと目が覚めた」

「なら、ボーナス弾んでよね」

ケンはそう言ってウインクした。

そしてリアムは早々に裕司に連絡した。

いま日本は朝の早い時間だろう。

でもリアムは構っていられなかった。

しかし裕司は由里のことは何も知らなかった。

却ってパニックになったくらいだ。

「どういうことだ。どうして、それに由里はいつニューヨークを発ったんだ」

と焦った声で矢継ぎ早に質問してきた。

リアムは覚悟を決めてリリアの事、由里がミスターゴバートに言われた事、そしてホテルのロビーでリアムとリリアと鉢合わせした
事、そのあと由里をすぐに追いかけることができなくて由里は多分その足で空港に行って東京に向かったであろう事を伝えた。

「もう1週間以上か、とりあえず由里の携帯にかけてみるよ」

そういって電話を切った。

多分由里は携帯を変えているリアムが何度電話してもつながらなかったし、この2~3日は現在使われていないというメッセージが流れる。

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