その頃リアムはあの時由里をすぐに追いかけなかった自分を、許せないでいた。

そしてリリアの事も由里に言わずに穏便に済まそうとしていた事を、後悔することになった。

ケンやマットにも口止めし、半年ほどリリアを預かれば済むと思っていた。

浅慮な自身の考えに歯噛みする思いだった。

ケンは何度も由里にちゃんと話をした方が良いと言ってくれたのに、大恩人の娘との縁談があるとはどうしても言えなかったのだ。

何とか自分自身で解決してから報告するつもりだった。

それがこんな行き違いを生んでしまった。

全てリアムの責任だ。

由里のいなくなったペントハウスは、リアムにとってもう住む場所ではなくなった。

ただ寝に帰る場所になった。由里の匂いが残るベッドで眠れぬ夜を過ごしていた。

残された由里の服を見るのがつらくて、由里の使っていたクローゼットは開けることができない。

このペントハウスはリアムにとって由里そのものなのだ。

それなのに、ここに由里がいない。

おかえりなさいと言って飛びついてきてリアムの胸にそっと抱き着いてきた由里、前をはだけてシャツ1枚で歩き回るリアムを赤い顔をして見つめる由里、ベッドの中で妖艶に微笑む由里、目に焼き付いた由里の笑顔も怒った顔も照れた顔も困った顔もみんなリアムの宝物だった。

そんな由里を失ってしまった。

リアムは魂が抜けたようになった。

そんなリアムを見てリリアは、リアムとの結婚を父親に無理強いした事に罪悪感を持った。

リアムは食べる事も眠る事もできずに、とうとう1週間後に執務室で倒れた。

ケンはすぐに病院に入院させて面会謝絶にしてもらった。

会社のトップの入院は株価にもすぐに影響する。

秘密裏にケンはすべてを手配した。

そしてミスターゴードンとリリアにリアムがどれだけ由里を愛しているか、由里はリアムにとって命綱でもあり生きる意味なのだと説明した。

眠りながらも由里を呼び続けるリアムを見ていられないと、リリアはリアムとの結婚は諦めてくれた。

医者はとにかく眠ることが必要と睡眠薬と栄養剤の点滴が処方された。

3日間リアムはベッドから起き上がれずにいた。