リアムは由里を追いかけようとしたが、リリアが腕を離さずミスターゴバートにも

「リアム今日のリリアのエスコートをすっぽかすのは許さないよ。さあ行こう」

と言って両側をガードされて身動きが取れなくなった。

おまけにリリアに不意打ちでキスされた時に、確かにカメラのフラッシュがたかれたのを感じた。

リアムは二人に諮られたのを察したが、大恩人のミスターゴバートとその娘であるリリアに恥をかかすわけにはいかず、とりあえず今日のパーテイ会場に向かうしかなかった。

パーテイの間もリリアはリアムの腕にまとわりついて電話をしようとすれば、携帯を取り上げられて電話をすることもできなかった。

やっとリリアを引き離しレストルームに駆け込んで、由里に電話できたのは1時間半後の事だった。

そのころ由里は空港で東京行のフライトを、待っているところだった。

リアムの電話には出るつもりもなかったが、果たしてリアムが電話をしてくれていたかも定かではなかった。

実際リアムが電話もしてきてくれないことを恐れて、携帯の電源を切っていたのだ。

東京に着いたら携帯は変えるつもりだが、何も考えずにペントハウスを飛び出してきてしまったのだ。

機中でこれからのことをしっかり考えなければならないが、頭の中はさっき見た二人の事でいっぱいだ。

自分の中に眠る嫉妬心を持て余している。

ひょっとしたらリアムが追いかけてきてくれるかもと思っていたが、そんな事はなかった。

それがリアムの答えなのだろう。

ミスターゴバートが言っていたように、リアムは由里に伝えられなかったのだ。

由里を捨てて恩人の娘さんと結婚することを、言えずにいたのだ。

由里と違って彼女には素晴らしい後ろ盾があるのだから、由里と比べるまでもないのだ。

東京行のフライトのアナウンスが入り由里は、ゆっくりとゲートに向かいニューヨークを後にするために歩き出した。

そして二人はこの後会うこともかなわず、すれ違っていく時間と境遇に苦悩することになるのだった。