真夜中の償い

新しいものが好きなニューヨークっ子も最初は絶対飛びつくが、リピートしてもらわないと一発勝負で終わってしまっては、意味がない。

うさぎ屋の新しい定番商品として、定着させなければいけない。

最中にも色を付けて抹茶の薄いグリーン、ゆずの黄色、塩は最中の色での3色展開をまずやってみてはどうかと提案する。

うさぎ屋はセントラルパ―クの近くに路面店があり、5番街の高級デパートにも出店している。

ニューヨークでの評判を見て日本のうさぎ屋でもやってみればいいのではと思っている。

実はうさぎ屋はパリにも出店を考えているらしく、今のこの時期ニューヨークで失敗する訳にはいかず、売上も良くも悪くも横ばいで安定はしているけれど、起死回生の為の新しい商品創りを考えているのだ。

「由里ありがとう。これならいけそうだ」

「田村さん頑張ってください。うさぎのマークを最中に焼き付けるのも忘れないでくださいね。絶対いけると思うのです。あとは持ち
帰りをどうするかですが、それも少し案があります。でもとりあえずこれでいけるのか持ち帰って社内でご検討ください」

「由里にはいくらマージンを払えばいい?その辺も計算に入れないといけないと思っている」

「私はアイデアを出しただけなのでその辺はいらないですよ。決まったらマーケテイングや売出し方法、コマーシャルのプランニングをお任せいただければそれで充分です」

「ほんとにいいのか?こんなアイデアうちのスタッフは誰も考えつかなかったよ。由里の斬新なアイデアには感服だよ」

「ありがとうございます。実は同じようなことを定番の最中でもできると思っているんです。白餡、ずんだ餡、抹茶餡、ゆず餡なんてどうです?カラフルで楽しいと思います。私いつも思っていたんです。餡にもっとバリエーションがあってもいいのになあって、こっちのほうが早くできますよね。色付きの最中はアイスでも使えるから一石二鳥じゃないですか?」

といって由里は微笑んだ。田村は唖然として

「そうだな、なんで思いつかなかったのだろう。最中の餡はうさぎ屋の伝統的な漉し餡と決まっていて、思いもしなかった。目からうろこだ。由里ありがとう早速持ち帰って皆にも相談してみるよ」

そういって田村は飛ぶように帰っていった。

そして2か月後の6月末にうさぎ屋ニューヨーク進出5周年のイベントとして、最中のアイス“モナキューブ”と名付けられたものと、抹茶、ゆず、塩味の餡の新作最中がダブルで発表された。

5月中旬から大々的にSNSなどを酷使して、CM展開されたうさぎ屋のアイスと新作最中は大ヒットとなった。

連日うさぎ屋に長蛇の列ができ、いまや

「モナキューブたべた?」

がニューヨークっ子の合言葉のようになっている。

5番街のデパートにもイートインスペースが大きく取られ、うさぎ屋はマスコミにも注目された。

田村は秋に向けてアイスの種類をあと3種類増やしたいと言っている。

いまモナキューブのお持ち帰りは3種類を2個づつの6個セットにしているので、それを全種類1個ずつのセットにしたいらしい。

もちろん好きな味の6個でもOKなのだが、お持ち帰りは3個か6個のどちらかになっている。

そんなうさぎ屋の成功を受けて、YSプランニングにはそんな商品開発の協力の依頼や広報の依頼も舞い込むようになった。

田村がYSプランニングの由里のアイデアだということを、TVのインタビューで話してしまったからだ。

必然的に由里も忙しくなっていったが、リアムとの暮らしは順調だと思っていた。