真夜中の償い

どこを見ても欠点のない完璧な顔とモデルもかくやというスタイルを持ち社会的なステイタスも申し分のないリアムが、そんなことで嫉妬するのが由里には信じられないが、とにかくリアムは独占欲が強い。

由里が少し困ったことになるのもしばしばだ。

先日もニューヨークに進出して5年の甘味処のうさぎ屋の御曹司で、ニューヨーク店を仕切っている田村に新しいメニューを相談された。

彼は由里がニューヨークに来てからの、友人でもあり恩人でもある。

なれないニューヨークで相馬に迷惑をかけたくなくて色々な悩みを相談していて、親身になってくれた人でもある。

また由里の独立も応援してくれた。

そんな彼の相談なので由里も精一杯応えたいと思っている。

呼び出されて5番街のカフェで話をしていた。

たまたま窓際に座っていて顔を寄せて話に夢中になっていたら、テーブルの横に突然影が落ちて、思わず見上げたら不機嫌そうなリアムが立っていた。

「由里こちらは誰?」

と低くとがった声で訪ねてきたのには、二人ともびっくりして飛び上がりそうになった。

リアムに彼を紹介してお仕事を頂戴しているのでその打合せだと納得してもらうのに、しどろもどろになった。

田村はそんな二人が面白かったのか、肩を震わせて笑いを堪えていた。

何とかリアムを納得させて帰ってもらったのだが、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、結局相談の内容は理解したので少し時間をもらうことで田村とは別れた。

その日の夜リアムに思いっきり文句を言って、しばらくは口を利かなかった。

そして1週間後今度はリアムにきちんと今日田村には事務所に来てもらって、打ち合わせをすると話して了解をもらった。

その日真理子に7番街にあるマカロンショップでマカロンを全種類1個ずつ買ってきてもらった。

そしてそれを田村に見せながら、うさぎ屋の名物である最中にアイスを詰めて新しい商品にしてはどうかと提案したのだ。

シューアイスと言って日本では定番のアイスクリームで、シュークリームの中身をアイスにしたものがあるのだが、その最中番だと思ってもらえば良い。

真四角の最中の中に、餡の代わりにアイスを入れるのはどうかと提案した。

まずは3種類くらいからやってみるのが良いだろうと思うと田村に伝えた。

アイスが解けてくると最中はふにゃふにゃになる。

それをどう解決するか難しい所だけれど着眼点としては面白いと、田村は意欲的になった。

スペースが許すならイートインできれば、まずはそこから始めてもいいと思う。

冷たい緑茶、ほうじ茶に最中アイスを添えて出すといいのではと提案する。

最中はそんなに大きくない小さめのサイズでアイスは抹茶、さくら、塩、ゆず等工夫次第でマカロンのように種類は無限大だ。

そしてそれぞれ特有の色合いでも表現できる。

由里は最高でも6種類くらいにしぼるべきと思っている。

アイスを作る機械や保存するショーケースも設備投資が必要だ。

イートインスペースなどにもお金がかかる。

設備面に関しては由里は業者から見積もりを取って提示した。田村は

「たった1週間でここまでやって来るとはさすが由里だね」

「もう夏はすぐそこなのでやるなら今年の夏からですよ。あまり時間の余裕がないので田村さんも早急に決断して戴かないと、と思ってできるだけ数字も出してあります」

と言って設備投資と売り上げの予想も、損益分岐点などもきちんと示した。

そこは相馬仕込みで、何を提案するにも必ず収支のバランスまで見せなくては話も聞いてもらえなかった。