真夜中の償い

「またそんなことを言う。僕は由里がいいんだ」

「リアムも9歳で両親を一度に亡くして儂らがいなければきっと日本で施設に入っていたと思う。たまたま、儂らがこいつを引き取る事ができたので家族がいるだけじゃ」

とグランパが言った。そしてグランマが

「これから由里も家族を作っていけるわ。こんなに素敵なお嬢さんだもの。料理も上手で純粋で優しくて思いやりがあって、そして強い女性だわ。リアム、他の男に取られないようにしっかり由里を捕まえておくのよ」

「アイ」

とアイルランド語で答えるリアム。

由里はお褒めの言葉をたくさん貰って、こそばゆい気持ちになったがグランパとグランマの言葉がうれしかった。

その日は由里も退院したばかりで疲れているので、後片付けは男性陣に任せて先に休ませてもらった。

家の中では松葉杖も使わずに壁を伝って自由に移動できるので、みんなの手を煩わせることもなく過ごせている。

最初はリアムの祖父母が家にいたのには驚いてどう接したらいいのかわからなかった由里だが、二人の優しさや由里のことを孫のように思って接してくれる気持ちがうれしくて、二人に会えたことが幸せだと思えた。

家族ってこんな風に温かいのだとなぜか泣けてきた。

リアムが焦ってなぜ泣いているのか、どこか痛いのかと由里を抱きしめながら心配してくれた。

由里はグランパとグランマが本当の祖父母のように思えて、初めて家族の温かさを感じてうれしくて泣けてきたのだというと、ぎゅっと一層強く由里を抱きしめた。

その夜はリアムに抱きしめながら悪夢に悩まされずにぐっすりと眠れた。

次の日も一日家にいたのでグランマにリアムの好きなアイルランドの料理を習って、グランマと二人でずっとキッチンにいた。

リアムが由里を独り占めできなくて、拗ねるぐらいグランマと楽しく過ごした。

リアムはグランパにジムを今の部屋から外に持っていく案を相談していた。

二人でメジャーをもってプールサイドの東屋で何やら相談していた。

また、自分で作るつもりなのだろう。

お昼は由里がおにぎりにだし巻き卵やニンジンのきんぴら、かぼちゃの煮物などをサっと作った。

リアムは由里の作る和食の家庭料理が好きだけれど、グランマとグランパは気に入ってくれるか心配だった。

どれもオイルを使わない健康的な料理にグランマは喜んだ。

グランパの健康を考えてぜひ和食の作り方を覚えたいと言った。

“リアムがそう言うと思ったよ“となぜか得意げに言うので、みんなで大笑いした。

二人といるときのリアムは子供に戻ったようだ。

リアムの知らなかった1面を見つけて、由里は余計にリアムのことを愛しく思った。

こうして色々なリアムをもっと知りたいと思うのだった。

由里はこんなにもリアムに惹かれているのを自覚して自分が怖くなった。

もう引き返すことはできない。

リアムを失ったら自分が壊れてしまうようで恐ろしかった。

由里は初めての恋にときめきながらも自戒するのだった。